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店の骨格・コンセプトづくり 第1回

前回まで、開業準備に際した融資申込までの手順をご紹介してきました。

今回は引き続き、下表の居酒屋開業を例として、実際に資金調達を優位に進めるための開業準備を、ポイントを追いながらご説明します。

ケーススタディ 居酒屋の開業
開業資金

1,200万円
内訳:自己資金400万円、借入金800万円

用途

物件取得費 300万円
内外装工費 500万円
厨房設備費 200万円
運転資金・その他 200万円

コンセプトシートを作成する

開業の準備に際し、まず初めに行わなければならないのが「コンセプト」の作成です。
外食産業では業種業態の特性などを指すこともありますが、ここで言う「コンセプト」は、大切な事業の骨格ということ。
実現を目指している、思い描いている「店舗イメージ」をできる限り具体化し、整理することが、開業への第一歩となるわけです。

しっかりとコンセプトをまとめたシートは、そのまま事業計画書のベースともなります。このデータをもとにエリアや物件調査など準備を進め、その結果をまたデータにフィードバックすることで、より精度の高い事業計画書が実現します。

コンセプトシート例

業種・業態 居酒屋
出店エリア
新橋駅、赤坂駅周辺のビジネス街
立地 繁華街そばの路地裏、路面店
ターゲット 近隣オフィスのサラリーマン、OL
セールスポイント

焼とんともつ煮を主力商品としたワイン酒場がコンセプト。
焼とん、もつ煮には毎朝仕入れる鮮度の高いホルモンを用いて高品質を打ち出すとともに、ワインに合わせる調味のひと工夫を加える。
男性客(サラリーマン)だけでなく、女性客(OL)も仕事帰りに手軽に利用できる居酒屋をめざす。

続いてコンセプトシート各項目のポイントを、上記「セールスポイント」から説明します。
業界経験者にはこの作成を得意としている方も多いようですが、重要なのは「出店エリア」「立地」「ターゲット」の内容が一致していること。この一致がなければ、肝心の集客は見込めません。

設定したセールスポイントが、どのようなエリア(商業エリア、ビジネス街、学生街など)で強みを発揮できるのかを分析しましょう。
市区町村や駅名、さらに立地条件(駅前、繁華街、郊外、ビルインなど)も具体的に設定、絞り込みをするのが賢明です。

客単価 昼:なし、夜:2800円

アルコール売上げ比率

40%

客単価の想定は、売上予測のための重要なポイントになります。
具体的なメニューを作成し、標準的な注文例(料理・ドリンクの組み合わせ)を仮定・算出することで、その精度をできる限り高めましょう。

店舗規模 12坪24席
客席構成

カウンター:6席
テーブル:2人席×3、4人席×3

店舗規模では、席数だけでなく客席構成も考慮しましょう。
テーブル席はグループ客を呼び込めるかわりに、客席の回転率低下(4人席の2?3人利用など)の一因となるなど、売上予測にも影響を及ぼします。

家賃 35万円以内
営業時間 17時30分~翌0時(6.5時間)
定休日 日曜・祝日
従業員数 社員1人、アルバイト2人

構想している営業スタイルが、何人のスタッフを必要とするのか。人件費を具体的に算出します。

メニュー構成
フードメニュー

・焼とん(10品前後)
シロ 120円
チレ 120円
ガツ 120円
レバー 120円
テッポー 120円
カシラ 140円
ハラミ 140円
盛合わせ5本 500円
盛合わせ 750円

・ごはんもの、デザート(8品前後)
ガーリックライス 450円
うどんのカルボナーラ風 600円
黒ごまアイス 350円

・つまみ(30品前後)
もつ煮込み 500円
枝豆 300円
野菜スティック
チーズディップ添え 500円
オリーブ 300円
自家製ピクルス 400円
豚レバーパテ 400円
シーザーサラダ 450円
マッシュポテト 500円
ポテトコロッケのバルサミコソース仕立て 500円
レバカツ 400円
ホルモンのアヒージョ 500円
ホルモンのガーリックソテー 500円

メニュー構成
フードメニュー

生ビール グラス 350円 ジョッキ 450円
グラスワイン(赤・白各3種類)480~650円
ボトルワイン(赤・白・泡計30種類)1800~4500円
サングリア(2種類) 600円
焼酎(5種類) 500~600円
日本酒(5種類) 500~700円
サワー類(10種類) 450~500円
ソフトドリンク 300円~

後からの修正を前提として、具体的なメニュー表を作成しましょう。
ベンチマーク店の調査を進める中で、商品の内容・数量、オペレーション、長所や弱点が把握できるようになります。

この例では「ビジネス街のサラリーマン・OL」をターゲットにセールスポイントを設定しました。
もしこれで繁華街や郊外に出店すれば集客は危うくなります。セールスポイントと出店立地が噛み合ず失敗するケースは多く見られるので注意が必要です。

早期のメニュー設定が、さまざまな検証を可能に

売上を算出するためには、「客単価」「店の規模」「客席構成」が重要となります。
しかし物件探しになると、「店の規模」は家賃とともに選定の基準となりますが、「客単価」「客席構成」はないがしろにされがちです。

今回の例ではグループ客の利用を想定してテーブル席を多く配置していますが、「客単価」と「客席構成」がどういった利用動機に応じるのかにも影響するので、具体的に設定しておきます。

「営業時間」「定休日」「従業員数」は売上と人件費の算出に必須の要件です。とりわけ居酒屋では「ランチ営業」「深夜営業」の有無が収支に大きく関わりますので、予め決めておく必要があります。

さらにコンセプトシートでは、「メニュー構成」をできるだけ詳細に設定するのが理想です。
セールスポイントがお客様からの支持を獲得できるのか。開業までに精度の高い検証を行うためには、具体的なメニューが不可欠です。また、メニュー構成がある程度固まれば、想定される注文パターンから、精度の高い客単価の予測が可能になります。

「ベンチマーク店のチェック」も、開業準備には必要です。美味しい・美味しくないという一面だけの評価ではなく、集客のポイントを幅広い角度から追求しましょう。
この際にもメニュー表があれば、商品の価格や構成も比較でき、お店の強み・弱点も予測が可能になります。

また、もしもベンチマーク店の調査から価格設定の下方修正が避けられない場合には、客単価にも影響するので事業モデルを再検証するなど、メニュー構成の早期設定はさまざまな方面で役立ちます。

開業予定の方、創業計画書を作りたい方は OAGコンサルティングへご相談下さい。

※本コラムは株式会社OAGコンサルティングからの寄稿です
投稿:2015年10月

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