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居酒屋経営~原価率設定のポイント
全メニューの原価率を一律で低くする必要はない
日本人には非常にマジメな方が多いため、居酒屋経営セミナーなどに参加した際に講師から「原価率は30%以内に抑えましょう」という話を聞いた際に、「分かりました。当店ではすべてのメニューの原価率を28%に設定してみます!」などと しっかりと全メニューの原価率を30%以内に抑えるべく、その場で計算をし始めるシーンがよく見られるそうです。
でも、セミナー講師が言う原価率を30%以内に抑える、というのは、「すべてのメニューの原価率を30%以内に設定したほうが良いですよ」ということではなく、「平均すれば30%以内になるように調整しましょう」ということなのです。
実際に、儲かっている居酒屋の原価率をメニューごとに見てみると「10%から80%程度までバラバラ」であることのほうが多い、つまり「儲かるメニューと儲からないメニューが混在している」と言えます。
では、なぜこのように儲かっている居酒屋の原価率にはメニューごとに大きな差があるのでしょうか?
答えは「原価率の高いメニューでお客様を引き付ける」ためです。
「お得なメニューでお客様を引き付け、原価率の低いメニューも併せて頼んでいただくことで、最終的にはお客様満足度(CS)を高く保ちながら、平均原価率を30%以内に抑えるように工夫をしている」のですね。
居酒屋の広告やチラシを見ていると「赤字覚悟!」「お1人様1品のみのご注文とさせていただきます」などの注釈がついたメニューが紹介されていますよね。これが原価率80%(時には100%超え)のメニューということになります。
例えば居酒屋で、「本日限定!本マグロの大トロの刺身が1,000円。中トロの刺身は500円です!普段は各4,000円、2,000円の赤字ご提供のため、お1人様1回限りのご注文とさせていただきます!」などの告知があるとしましょう。
お客様は日常、大トロの刺身を食べたくても値段が高いためにグッと我慢をして注文をされませんが、このようなサービスがあると、席に着くや否や、まずは大トロの刺身!とご注文をされるでしょう。
でも、わざわざ居酒屋に足を運んでくださったお客様は、目玉商品だけを食べて帰るのではなく、「もやし炒めは安いから腹を満たすために頼んでおこう」「この焼き鳥盛り合わせも美味しそうだな」などと他のメニューも試してみられるはずです。
つまり、原価率80%(時には赤字)の大トロの刺身を召し上がったお客様が、もやし炒めなどの原価率が低い料理を召し上がることで、最終的には原価率が30%以内に収まることが多い、ということなのです。
もちろん、原価率をうまくコントロールするためには、「本日のおすすめ」として赤字覚悟のメニュー以外に原価率の低いメニューもさりげなくお客様におすすめすることが必要です。
集客商品と収益商品を考える
このような役割を持った商品を、マーケティングの分野では「集客商品」と「収益商品」という言い方をします。
赤字覚悟の大トロの刺身は、それを頼んでもらうことで利益を狙う商品ではなく、「集客をするための商品」です。その集客商品に興味を持ち来店してくださったお客様に「原価率の低い収益商品」をお召し上がりいただくことで、儲けていきましょう、ということです。
主力メニューの原価率を棚卸する
いかがでしょうか。居酒屋の経営を健全化するためには、全メニューの原価率を一律で30%以内に抑えようとするのではなく、集客商品と収益商品を意識的に分けていくことが必要なのです。
ぜひ、自店主力メニューの原価率を表に書きだし、計算してみましょう。
もちろん、表に書き出すだけでなく、意識的に集客商品を設定して、「次回販促時のおすすめメニュー」としてアピールしてみていくことも重要です。
原価率計算や収益商品の設定作業などは、案外やってみると面白いものです。
ぜひ、実施してみてくださいね。
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