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飲食店経営に役立つ商圏分析の方法

なぜ飲食店経営に商圏分析が必要なのか?

飲食店経営の商圏分析

孫子の兵法で「敵を知り、己を知れば、百戦危うからず」という有名な言葉があります。これは、敵と味方のことを熟知して戦略を立案し、戦いに臨めば負けることはないという勝利を得るための指針です。
企業経営に置き換えると「競合企業やお客様の情報を収集・分析し、自社の状況を踏まえて戦略を立案すれば、絶対に売上を高めることができる」と解釈することができます。

飲食業界は、2015年度の厚生労働省「雇用保険事業年報」によると、開業率が9.7%、廃業率が6.4%であり、他の業種に比べて開業率と廃業率が共に1番高く、圧倒的に競争が激しいです。また、飲食店は、ビジネスモデルの特性から店舗を構える必要があり、お客様が店舗に来店できる範囲は限られるので商圏が発生します。
そのため、商圏分析を行い、競合店やターゲットとなるお客様をしっかりと把握し、その状況に基づいて自社の戦略を立案することで売上を高めていきたいです。

そこで今回は、飲食店が戦略を立案するために必要な商圏分析の方法をご紹介させて頂きます。

商圏の範囲はどのくらい?

商圏分析をする際にポイントとなるのが、お客様が来店できる範囲の距離です。お客様が店舗から近い場所に居住や勤務している場合は来店しやすく、反対に、遠い場合はよほど動機がない限り来店は見込めません。
また、店舗の立地環境もポイントになります。大きく分けると、お客様が徒歩で移動する「都心部」と、車で移動する「郊外」の2つになります。徒歩か車かで移動できる距離が異なるので、商圏の範囲が変わってきます。

商圏範囲は、自店のお客様の半数以上が占める1次商圏、目的来店を促すことで集客が見込める2次商圏があります。立地環境によって異なりますので、以下の数値を参考にしてみて下さい。

立地 1次商圏 2次商圏
都心部 半径500m(徒歩で約6~10分) 半径1km
郊外 半径3km(車で約6~10分) 半径6km

商圏を地図でわかりやすく把握しよう

今回は、誰でも無料で使えるツールとして、総務省統計局が整備し、独立行政法人統計センターが運用管理を行っているホームページ「政府統計の総合窓口e-Stat」の中に収録されている「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を使いながら商圏分析の方法をご紹介します。

商圏を地図でわかりやすく作成しよう

例として、カシオ本社(東京都渋谷区)を基に商圏分析をしてみましょう。都心部に立地しているので、1次商圏である半径500mを基に地図を描きたいです。
まず、調べたい住所の入力や地図上からクリックするだけで商圏の中心を指定できます。あとはエリアを半径500m、1km、3kmなどに設定できるので、半径500mに設定します。そして、自社店舗(赤色)、仮想の競合店として5店舗(青色)をマーキングとナンバリングしてみます。そうすると、以下の図のように視覚的にターゲットとなるお客様の範囲と競合店が把握できます。なお、「地図で見る統計(jSTAT MAP)」ではGoogle Map上で見やすく作成することができます。

商圏は、河川、線路、大型道路、最寄駅と次の駅との距離などにより、お客様の移動の負担や心理的な遠さが変化します。また、大型の集客施設により、お客様の動線が変化しますのでマーキングしておきましょう。
競合店においては、実際に食事をしてお客様の視点から分析してもよいでしょう。商品、店舗づくり、接客、プロモーションや、お客様を見てターゲット層を分析してレポートにしてみても貴重な資料になります。

商圏分析に必要なデータを抽出しよう

「地図で見る統計(jSTAT MAP)」では、作成したエリアの図を基に統計データのレポートを作成できます。オススメは、商圏の範囲を設定するだけで国勢調査や経済センサスなどの統計データをまとめてレポートにできる「リッチレポート」という機能です。各種データがあり、グラフで視覚的にわかりやすくまとめられています。そこから飲食店経営において重要なデータを抽出して資料としてまとめるとよいでしょう。以下のデータ項目をポイントにしてみて下さい。

①人口数・推移
商圏内の人口数は、多ければより市場規模が大きくなるので、売上に影響する数値として重要です。また、人口の推移は今後の人口の増減を予測するのに活用できます。人口の推移は、5年ごとに実施される国勢調査のデータから抽出できます。

②年齢別・性別人口数
年齢別・性別人口数は、ターゲットを決める際に活用できます。ボリュームのあるゾーンをターゲットにした店舗づくりをしたいです。「リッチレポート」では、5歳毎のゾーンで人口数が把握でき、グラフとして見やすくまとめられています。

③人員別世帯数
人員別世帯数は、単身世帯と2人以上の世帯とで分けたいです。単身だと一人で食事ができるカウンター席、ファミリー層だとテーブル席が必要になります。また、求められるメニューも変わってきます。

以上が「リッチレポート」から抽出できるデータです。その他に飲食店経営で重要となる以下のデータもあわせて調べてみましょう。

④昼・夜人口数
人口数は、昼と夜で変化します。夜の人口はそこに住んでいる人で、商圏内の人口数と同じになります。昼の人口は、夜の人口に流入と流出する人口を合わせた数値であり、オフィスや学校、集客施設などがあると増加要因になるので、ターゲットとして見ることができます。数値は、市区町村範囲ですが国勢調査で調べることができます。

⑤最寄駅の乗降客数
最寄駅の乗降客数で地域の人の流れがわかります。特に、駅前に立地している店舗では、駅の乗降客数が店前通行量に影響するため重要になります。数値は、各路線のホームページから調べることができます。ただし、乗り換えのみで駅から出ない数値も含まれたりする場合もありますので、最寄駅の状況を踏まえてみて下さい。

以上のポイントを整理すると飲食店経営に役立つでしょう。
《例》初台エリア

1次商圏(半径500m) 数値
人口数・推移(2015年度) 17,946人(5年間で5.7%上昇)
年齢別・性別人口数 男女共に30代が多い
人員別世帯数 単身世帯は約66%
昼・夜人口差 昼は夜の約2.4倍
最寄駅の乗降客数 1日約66,000人

いかがでしたでしょうか。
今回は、商圏分析の方法を無料で使えるツール「地図で見る統計(jSTAT MAP)」を使ってご紹介させて頂きました。商圏は、立地の条件によって異なりますので、自社の店舗独自の分析をしてみて下さい。また、年度ごとで定期的に作成して比較してみるのもよいでしょう。 ぜひ、商圏分析を活用して戦略的な経営を行い、売上を高めていきましょう。

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