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忘れると損?!確定申告で飲食店経営者が見落としがちな「所得控除」

所得控除

個人事業の飲食店経営者の確定申告は、飲食店の営業による「売上」から、営業のために必要な食材費・人件費・店舗の家賃に加え減価償却費などを事業の「必要経費」として差し引いて「事業所得」を計算するというのが基本的な流れです。
そして、その「事業所得」から更に、経営者自身とその扶養家族における医療費や保険料は「所得控除」をすることができ、所得控除後の金額が「課税所得額」となり、最終的にその「課税所得額」に対して税金がかけられます。
よって、個人事業の飲食店経営者の確定申告は「必要経費」に加え、申告可能な「所得控除」をもれなく申告することが税金の払い過ぎを抑えるポイントになります。
一般の会社員の場合は、勤めている会社の年末調整の手続きのなかで「所得控除」を申請することができますが、個人事業主の場合は自ら確定申告する必要があります。そこでこのコラムでは、飲食店経営者が見落としがちな「所得控除」を中心に解説します。
(本コラムは2020年1月時点の情報を元に執筆しています)

雑損控除

経営者と生計を一にする扶養家族が、災害又は盗難若しくは横領によって、資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けることができます。これを雑損控除といいます。対象となる資産は、棚卸資産若しくは事業用固定資産等又は「生活に通常必要でない資産」のいずれにも該当しない資産です。

<雑損控除の対象、対象外となる資産の例>

資産の種類 具体的にはどんなもの? 雑損控除 補足
1.棚卸資産若しくは事業用固定資産等
  • 業務用冷蔵庫
  • 業務用ガスレンジ
  • お店のテーブル・椅子
対象外 これらの資産は事業の収支上の取扱対象になるため「所得控除」対象としては取り扱わないため
2.生活に通常必要でない資産
  • 別荘
  • 30万円を超える貴金属(製品)や書画、骨董など
対象外 富裕層の贅沢品と見なされるので、その損害については国が「所得控除」として補助する対象とされない
上記1.2に該当しない資産
  • 自宅
  • 主に通勤や買い物に使用している自家用車
対象

対象の資産が

  1. 震災、風水害、冷害、雪害、落雷など自然現象の異変による災害
  2. 火災、火薬類の爆発など人為による異常な災害
  3. 害虫などの生物による異常な災害
  4. 盗難
  5. 横領

いずれかの原因で損害を受けた場合に「雑損控除」が可能です。昨今増加している大型の台風による被害時には「雑損控除」について自治体の支援情報などを通じて比較的周知されますが、盗難などの個別の被害では「雑損控除」が見落とされがちです。残念ながらお店の備品には適用されませんが、万一経営者や扶養家族がこのような被害に遭われてしまった場合には忘れずに申告しましょう。

医療費控除・セルフメディケーション税制

確定申告を行う1月1日から12月31日までの1年間に、経営者と生計を一にする扶養家族にかかった医療費が一定額を超えるときは、その医療費の額を基に計算される金額の所得控除を受けることができます。一般的には、実際に支払った医療費が10万円を超える場合のみ医療費控除が可能と考えられていますが、その年の総所得金額等が200万円未満の人は、総所得金額等の5%の金額を控除することができます。したがって、例えば開業初年度などでは10万円以下でも医療費控除を行える可能性があります。
医療費控除を受けるためには、病院で受け取った領収書を元に「医療費控除の明細書」を作成する必要がありますので、病院で受け取った領収書は必ず大切に保管するようにしましょう。

また、2017年1月1日から、自治体が主催する健康診断等を受診していることが前提となりますが、特定の医薬品を年間1万2000円以上購入した場合に「セルフメディケーション税制」に基づく控除ができるようになりました。
セルフメディケーション税制の対象となる医薬品のパッケージには、セルフメディケーションの識別マークが表示されており、対象商品を購入するとレシートにもその旨明示されます。このレシートも必ず保存しておきましょう。

<対象医薬品としてのセルフメディケーション識別マーク>

対象医薬品としてのセルフメディケーション識別マーク

そして、確定申告では、「医療費控除」か「セルフメディケーション税制」のどちらかを申告することになりますので、それぞれの年間の支払金額を合計して、有利なほうを選択するとよいでしょう。
セルフメディケーション税制には風邪薬なども含まれているように対象の範囲も広く、年間1万2000円以上の支払いで適用可能なため、医療費控除よりも申告できる可能性が高くなったとも言えます。

社会保険料控除

個人事業の飲食店経営者とその扶養家族は、国民年金・国民健康保険に加入している場合が多いのではないでしょうか。この国民年金・国民健康保険料、40歳以上の場合国民健康保険料と一緒に徴収される介護保険料については、その年に実際に支払った金額の全額を控除することができます。

口座振替で納付している場合には「(国民年金保険料分の)控除証明書」「国民健康保険料納付済額のお知らせ」を、コンビ二などで支払をしている場合には「領収証書」を元に社会保険料控除をするようにしましょう。

小規模企業共済等掛金控除

老後の生活資金を蓄えるために小規模企業共済や個人型確定拠出年金(iDeco)に加入して掛金を支払っている場合には、支払った掛金の全額を控除することができます。両方加入している場合でも、合算した全ての掛金を控除することが可能です。

控除を受けるためには、加入機関から届く「小規模企業共済等掛金払込証明書」が必要になりますので、無くさないように保管しておきましょう。

生命保険料控除/地震保険料控除

生命保険、介護医療保険、個人年金保険に加入している場合、その保険料の一定額を控除することができます。例えば、経営者が配偶者の生命保険料を支払っている場合には、その分も合わせて控除することが可能です。

また、自宅などに対象となる地震保険をかけている場合には、最大5万円分の控除を受けることができます。

保険料控除を受ける場合には、それぞれ加入している保険会社から送られてくる「生命保険料控除証明書」や「地震保険料控除証明書」が必要となります。

寄附金控除・寄附金特別控除

個人事業主が「ふるさと納税」を行った場合には、確定申告で控除を申告する必要があります。
また、日本赤十字社や特定の支持政党に寄付を行った場合、その寄付金も控除を行うことができます。こちらも控除を受けるには、寄付先が発行する寄附金の受領証が必要になりますので、忘れないようにしましょう。

まとめ

以上、本コラムでは飲食店経営者が見落としがちな「所得控除」についてご紹介しました。よくある「社会保険料控除」を見落とされることはないと思いますが「セルフメディケーション税制」などは特に見落とさないように気をつけましょう。また、あっては困ることですが、万一の急病などにかかった場合、所得控除という点から考えた場合に、控除の対象となる可能性がありますので、レシートや領収書類は必ず大切に保管するようにしましょう。

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