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飲食店開業の際に知っておきたい「青色事業専従者給与」とは?

夫婦2人で飲食店の開業

例えば、「夫婦2人で夢だった飲食店の開業を検討している」という場合、個人事業主として飲食店を開業するケースであれば、申告の形式を「青色申告」にすることで配偶者への給与を事業の必要経費として申告することができます。このコラムでは、飲食店開業の際に知っておきたい「青色事業専従者給与」に関連するポイントを解説します。

白色申告の場合「事業専従者控除」

はじめに”青色申告”の場合と比較する意味で、個人事業の”白色申告”の飲食店で、配偶者が働いていて、事業主が給与を支払っている場合をみていきましょう。
この場合、支払った給与そのものは必要経費にすることはできません。その代わり「事業専従者控除」という形で、事業所得から一定の金額を控除することができます。「事業専従者控除」を行える配偶者(親族)とその控除額は以下の通りです。

事業専従者とは・・・

イ) 白色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ) その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

なお、“専従”という言葉通り、配偶者(子供)が他のバイトをしていて収入を得ている場合などは、事業専従者と見なされないため注意が必要です。

その控除額は・・・

① 事業専従者が、事業主の配偶者なら86万円、配偶者以外なら専従者一人につき50万円
② この控除を行なう前の事業所得等の金額を専従者の数に1を足した数で割った金額

①、②を比べていずれか少ないほうの金額が、飲食店経営による事業所得から控除できる金額になります。
例えば開業1年目のお店の売上が500万円で、食材費や水道光熱費、お店の家賃といった経費等が300万円で、利益が200万円のとき、 事業専従者は配偶者ひとりの場合は86万円を控除することができます。よって、飲食店の営業による事業所得は114万円となります。

青色申告の場合「青色事業専従者給与」

ここからは、下記を例に「青色事業専従者給与」についてみていくことにしましょう。

<例>

  • 飲食店を開業する際に「個人事業の開業・廃業等届出書」とあわせて「所得税の青色申告承認申請書」「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出している。
  • 配偶者が同じ事業所(開業した飲食店)で働いていて、事業主が給与を支払っている。

この場合、支払った給与は「青色事業専従者給与」という扱いになり、その全額を必要経費にすることができます。「青色事業専従者給与」として給与を支払える配偶者(親族)の要件は、白色申告の場合「事業専従者控除」の場合と同じです。

「青色事業専従者給与」として給与を支払えるのは・・

イ) 青色申告者と生計を一にする配偶者その他の親族であること。
ロ) その年の12月31日現在で年齢が15歳以上であること。
ハ) その年を通じて6月を超える期間、その白色申告者の営む事業に専ら従事していること。

そして、「青色事業専従者給与」の金額については、合理的な説明ができれば上限はありません。先ほどの、開業1年目のお店の売上が500万円、経費等が300万円、利益が200万円となっている場合の例で、配偶者への給与が年間120万円(月額10万円)であったとすれば、 120万円をさらに必要経費として計上し、加えて、青色申告特別控除額65万円も適用できるので、飲食店の営業による事業所得は15万円とすることができます。

「青色事業専従者給与」の設定例

そうは言うものの、先ほど“合理的な説明ができれば”と記載したとおり、個人事情主に、飲食店の営業による事業所得しかなく、世帯主にほとんど所得がないのに、親族に多額の給与を支払っていることへの“合理的な説明”はなかなかありえませんし、加えて配偶者や子供に設定している給与金額が妥当であるかどうかにも、合理的に説明できる必要もあります。

「配偶者や子供に設定している給与金額が妥当なのか?」という点についての合理的説明は、「青色事業専従者給与」の支払を認めてもらうための「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出する時がひとつのタイミングになります。

「青色事業専従者給与に関する届出書」には、親族(配偶者・子供等)に支払う給与や賞与の支給額に加えて、仕事の内容や保有資格を記入する欄があります。
もし、親族以外で同じくらいの能力の人を雇って、その仕事を担ってもらった場合はいくらくらいの給与を支払う必要があるかを意識させるための項目です。それと比較して著しく高い青色事業専従者給与は、合理的とは認められず、必要経費にすることができません。また、実際に支払った専従者給与がこの届出の金額を下回る分には差し支えありませんが、上回った場合、超過分は必要経費として認められないので注意が必要です。

更に、年間の給与が103万円を超えると、配偶者や子ども自身が個々に所得税の課税対象になり、月額の給与が8万8千円を超えると、親族への給与の支払時にも事業主が源泉徴収を行わなければなりません。実際に支払った給与の合算が結果的に年間103万円以下の場合は、個々に確定申告が必要となるといったことも発生しますので、こういった事柄にも注意を払いましょう。

このようなことから、配偶者や子供への「青色事業専従者給与」は、白色申告の場合の「事業専従者控除」の86万円のメリットを上回るが、年間103万円を超えず、月額8万8千円のラインも超えない範囲で設定するケースが多いようです。

なお、「世帯主にほとんど所得がないのに親族に給与を支払っている」点については、タイムレコーダ等による勤怠実績の客観的記憶により説明できるようにしておくことが必要でしょう。

法人として開業する場合はどうなるの?

法人として飲食店を開業する場合、法人は経営者とは別の「人格」を持つこととなりますので、配偶者に加えて経営者である自分自身の給与も、法人としての飲食店としては全額必要経費となります。配偶者を“会社役員”として定義することで、「青色事業専従者給与」以上の金額を、配偶者に対して給与として支払うことも可能です。

この点だけを捉えれば法人として開業したほうがよさそうですが、ただ、法人として開業すると、個人事業主として開業する場合には発生しない「法人税」が課せられます。例えば赤字の決算でも法人住民税の均等割りを払わなければなりませんし、その他申告全般についても複雑となり、専門家である税理士との顧問契約、顧問料の支払が基本的に必須となります。

特にスモールスタートを考えている場合には、まずは青色申告の個人事業主として開業し、3年目時点でお店がどの程度軌道に乗っているか、売上が消費税の課税事業者に該当する程度の規模になっているかなどの全体的な状況を踏まえて“法人成り”を慎重に検討したほうがよいかもしれません。

まとめ

以上、本コラムでは飲食店開業の際に知っておきたい「青色事業専従者給与」について解説しました。なお、配偶者や子供への給与の取り扱い以外にも、青色申告には

  • 5万円(令和2年分からは55万円。電子申告や電子帳簿保存をすれば65万円)の追加控除が認められる、
  • 詳細な家事按分が認められる
  • 3年間の損失繰越が可能である

といったような、様々なメリットがあります。

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