- 利益アップ・コスト削減
飲食店のための「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」解説
新型コロナウイルスは飲食店経営に深刻な影響を及ぼしており、政府や自治体により支援施策が実施されています。
このコラムでは、その中から「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」を取り上げ、
飲食店向けのポイントを解説しています。
なお、本コラムは2020年6月5日時点の情報を元に執筆しています。
また、複数の小規模事業者等が連携して取り組む共同事業についての解説は記載していません。
実際に補助金制度を利用される際は詳細情報・最新情報を必ずご確認ください。
持続化給付金とは別物
「小規模事業者持続化補助金」は、一般的に「持続化補助金」の略称で呼ばれており、平成26年から実施されていました。
それを土台に新型コロナウイルス対策のための上乗せ措置を講じたものが「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」です。
新型コロナウイルスの影響により売上が50%以上減少している場合に受け取ることのできる「持続化給付金」とは、
名称は似ているので紛らわしいのですが“別のもの”です。「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」は売上が減少していなくも申請できます。
「持続化給付金」と「持続化補助金(コロナ特別対応型)」はそれぞれ申請し、
それぞれ審査が通れば両方を受け取ることができます。後者の使途は申請した費用に限られるものの、
貸付とは違いますので返済する必要はありません。
相談窓口
「持続化補助金(コロナ特別対応型)」の相談窓口は、事業を営んでいる所在地を所管する商工会か、商工会議所になっています。
前者は商工会法に基づき主に「町・村」に設置されており、後者は商工会議所法に基づき「市・特別区」に設置されていて、
基本的に管轄が重複することはありませんので、まずはご自身の会社が相談する窓口を確認してください。
なお、商工会・商工会議所の会員でなくても持続化補助金に申し込むことができますが、
この補助金では申請書面について商工会または商工会議所の確認を受けることが要件になっています。
申請書面には商工会または商工会議所側による事業支援計画書も含まれていて、
その記入欄には補助事業終了後5年間の支援内容も記載することになっているので、
事実上、持続化補助金を受けるためには入会が必要になると考えられます。
年会費は事業規模に応じて年間1~10万円程度となっているようですが、
詳細の条件については地域により異なると想定されるため確認が必要です。
補助対象者
補助対象者は、公募要領で以下のように示されています。
業種 | 人数 |
---|---|
商業・サービス業(宿泊・娯楽業除く) | 常時使用する従業員の数 5人以下 |
サービス業のうち宿泊業・娯楽業 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
製造業その他 | 常時使用する従業員の数 20人以下 |
うち、飲食店は従業員5名以下であれば基本的に“商業・サービス業(宿泊業・娯楽業除く)”の分類で対象になります。
また、従業員の数が5名以上の場合でも、お弁当、惣菜、お土産の製造販売を行なっている場合、
事業に占める割合での判断となりますが「製造業その他」の分類で対象となる可能性がありますので、
テイクアウト販売を検討している場合等、まずは諦めずに相談してみましょう。
なお、すでに新型コロナウイルス感染症加点も講じられている「令和元年度補正予算 小規模事業者持続化補助金(一般型)」に応募し、
採択・交付決定を受けて補助事業を実施している方が、持続化補助金(コロナ特別対応型)を申請し採択された場合は、
いずれか一方しか補助金を受け取ることはできません。
補助対象経費
「持続化補助金(コロナ特別対応型)」の公募要領では、次の(1)~(4)いずれも満たす取組みについての経費を補助対象としています。それぞれ、飲食店における解釈のポイントとあわせて確認してみましょう。
======
(1)補助対象経費の6分の1以上が、以下のいずれかの要件に合致する投資であること。 A.:サプライチェーンの毀損への対応 B:非対面型ビジネスモデルへの転換 C: テレワーク環境の整備
解釈:
例えばデリバリー・テイクアウト販売への追加的な取組みを行う場合は“B:非対面型ビジネスモデルへの転換”と解釈でき、テイクアウト商品の開発費に加え、その広告費やweb受付システムの準備なども補助対象経費になると考えられます。
===
(2)申請手続きの中で策定した「経営計画」に基づいて実施する、地道な販路開拓等(生産性向上)のための取組であること。
解釈:
(1)に該当する経費が1/6以上含まれていれば、そのほかにも、経営計画を達成するためのイートイン売上回復のために実施する新型コロナウイルス対策費用も認められる可能性が高いと考えられます。例えば、お会計時のお客様との接触を減らしつつレジ締めの負担も軽減し生産性の向上も図れる自動釣銭機の導入などが考えられます。
===
(3)商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む事業であること。
解釈:
本コラム内「相談窓口」を参照ください
===
(4)以下に該当する事業を行うものではないこと。
同一内容の事業について、国が助成(国以外の機関が、国から受けた補助金等により実施する場合を含む)する他の制度(補助金、委託費等)と重複する事業 ※持続化補助金では、同一の補助事業(取組)について、重複して国の他の補助金を受け取ることはできません。他の補助金を受給しているか受給予定の方は、補助金を受け取ることが可能か、必ず、双方の補助金事務局に、予めご確認ください。
本事業の完了後、概ね1年以内に売上げにつながることが見込まれない事業 例)機械を導入して試作品開発を行うのみであり、本事業の取組が直接販売の見込みにつながらない、想定されていない事業
事業内容が射幸心をそそるおそれがあること、または公の秩序もしくは善良の風俗を害することとなるおそれがあるもの、公的な支援を行うことが適当でないと認められるもの 例)マージャン店・パチンコ店・ゲームセンター店等、性風俗関連特殊営業等
解釈:
接待を伴わない飲食店を現に営んでいる場合には不適格にはならないと考えられます。ただ、デリバリーやテイクアウト販売への取組みについて、自治体から助成金を受けている場合にはそれぞれの相談窓口に確認しましょう。その自治体施策の原資が”地方交付金”である場合などに、どのように取り扱われるか懸念があります。
======
なお、通常の補助金は、採択後の補助事業実施期間中に実際に使用した経費を一旦事業者自身が支払い、後日それに対する補助金を受け取る流れとなりますが、「持続化補助金(コロナ特別対応型)」においては特例として、2020年2月18日以降に発生した補助対象経費も補助金の対象になります。
また、令和2年2月以降の任意の1ヶ月の売上高が、前年同月(創業1年未満の事業者の場合は新型コロナウイルスの影響を受ける直前の3ヶ月間)と比較して20%以上減少し、
市区町村発行の売上減少証明書またはセーフティネット保証4号の認定を受けている場合は、補助金の半額を概算払いとして先んじて受け取ることができます。
補助率・補助額
補助対象経費として申請し“A.:サプライチェーンの毀損への対応”のためのものと認められた経費は
[コロナ特別対応型A類型]という取扱となり、経費の3分の2に相当する金額を補助金として受け取ることができます。
それ以外の経費については[コロナ特別対応型B・C類型] という取扱になり、
経費の4分の3に相当する金額を補助金として受け取ることができます。
補助の上限額は、合計100万円です。
申請手続の概要
公募要領に定められた所定の申請書を準備する必要があります。窓口が商工会となる場合と、商工会議所になる場合で、 様式にあらかじめ記載されている提出先の宛名等が異なりますので、 ご自身が申請する先から申請書の入手先の案内を受けると確実です。ただ、申請書に実際に記入する内容はほとんど共通しています。
以下、公募要領から、単独申請(複数の小規模事業者等が連携して取り組む共同事業ではない)場合の申請書様式と、 そこに実際に記入する内容との関係をまとめましたので参考になさってください。
様式名 | 申請書名 | 記入する内容 |
---|---|---|
様式1-1 | 小規模事業者持続化補助金事業<コロナ特別対応型>に係る申請書 | 自社の名称や所在地といった基本情報を記入します |
様式2 | 経営計画書 | 自社の業種業態と売上高や従業員の人数など営業状況及び新型コロナウイルス感染症の影響を乗り越えるための取組計画等を記載します |
様式3 | 小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>に係る支援機関確認書 | 様式1~2の申請内容を踏まえて商工会または商工会議所が作成する書類です |
様式4 | 小規模事業者持続化補助金交付申請書 | 持続化補助金を活用して取り組む事業の実施期間などを記載します |
様式5 | 小規模事業者持続化補助金<コロナ特別対応型>に係る補助金概算払請求書 | 売上が前年比較で20%以上減少していて、補助金の概算払いを希望する場合に利用します |
事業再開枠
政府は新型コロナウイルスに関連した緊急事態宣言を解除するにあたり、各業界団体と協力して
「業種別ガイドライン」を策定しました。うち、飲食店へのガイドラインは、
一般社団法人 日本フードサービス協会により作成され、所管省庁である農林水産省サイトに掲載されています。
https://www.maff.go.jp/j/saigai/n_coronavirus/attach/pdf/ncv_guideline-29.pdf
「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」の申請を行なった飲食店が、このガイドラインに沿って、
2020年5月14日以降に事業再開のために以下のような準備を行うために支払った経費が存在する場合は、
「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」とは別枠の「事業再開枠」として補助金が支給されます。
1.消毒費用 ・・・ 消毒設備(除菌剤の噴霧装置、オゾン発生装置、紫外線照射機等)の購入費、消毒作業の外注費、消毒液・アルコール液の購入費
2.マスク費用 ・・・ マスク・ゴーグル・フェイスシールド・ヘアネットの購入費
3.清掃費用 ・・・ 清掃作業の外注費、手袋・ゴミ袋・石けん・洗浄剤・漂白剤の購入費
4.飛沫対策費用 ・・・ アクリル板・透明ビニールシート・防護スクリーン・フロアマーカーの購入費・施工費
5.換気費用 ・・・ 換気設備(換気扇、空気洗浄機等)の購入費
6.その他衛生管理費用 ・・・ ユニフォームのクリーニング外注費、トイレ用ペーパータオル・使い捨てアメニティ用品の購入費、従業員指導等のための専門家活用費、体温計・サーモカメラ・キーレスシステム・インターホン・コイントレー・携帯型アルコール検知器の購入費
7.PR費用 ・・・ ポスター・チラシの外注・印刷費
「事業再開枠」については、1~7までの費用の合計に関わらず定額で50万円が支給されます。
ただし、「持続化補助金(コロナ特別対応型)」本体部分での交付決定額が50万円以下の場合は、
事業再開枠での支給額は、「持続化補助金(コロナ特別対応型)」本体部分での交付決定額が上限となります。
まとめ
「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」と「事業化最大枠」をあわせると 最大150万円の補助金を受け取ることができます。なお、中小企業庁は最近の採択状況として “「小規模事業者持続化補助金」の「コロナ特別対応型(第1回締切分)」について、 令和2年4月28日から、5月15日まで公募を行い、申請のあった6,744件について外部有識者による厳正な審査を行った結果、 5,503件の採択事業者を決定しました”と公表していますので、きちんと申請を整えれば、採択可能性は高いと考えられます。