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キャッシュレス決済で食材を仕入れたらどう仕訳すればよいの?

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ポイント還元などのお得感から、お店の仕入もキャッシュレス決済で支払う機会が増えているのではないでしょうか。ただ決済方法を事業用と個人用とで共有するなど、線引きがあいまいな処理は、税務署からの指摘を受け易くなってしまいます。そこでこのコラムでは、個人事業の飲食店で想定されるキャッシュレス決済による支払いについて、一般的な処理方法を解説します。
なお、このコラムはすべての取り扱いについて網羅する主旨のものではありませんので、個別にどのように扱ったらよいか分からないものがある場合は、税務署やご契約中の税理士に確認するようにしてください。

個人用と事業用を分けることが基本

お店(事業)の仕入を個人のキャッシュレス決済で支払うとどうなるでしょうか?個人のキャッシュレス決済では、自分や家族の食費や娯楽品などを買い物されていると思います。この中にお店(事業)の仕入が混ざることになってしまうので、後日利用明細を見ながら個別に該当の取引を特定する必要があります。
また、当サイトに掲載しているHANJO会計のように、利用明細を自動的に取り込んで仕訳する機能が備わっているクラウド会計ソフトを利用している場合、取り込んだ明細の過半が個人の買い物ということになると、逆に個人分の不要な取引を削除するほうが手間となってしまいます。
仮にこのような個人用の買い物をあいまいなまま会計処理してしまうと、お店(事業)の仕入が水増しされることとなり、その分事業の利益が出ていない計算になってしまうため、「分からなかった」「難しかった」というように故意ではなかったとしても、脱税と判断されかねません。
したがって、基本的には個人用と事業用の銀行口座をそれぞれ保有し、更にそれぞれ異なるキャッシュレス決済サービスを紐づけ、多少ポイント還元の多い少ないがあったとしても、厳密に使い分けるということが望ましいでしょう。例えばスーパーに自家用と事業用の食材を買いに行った場合は、手間ですが2回に分けてレジを通して、それぞれに支払いをするというようにして、取引の中に混在しないようにするのが基本です。

使い分けのイメージ

銀行口座 クレジットカード QRコード決済 運用
個人用 ○○銀行 普通預金口座 A社のカード A社のサービス 個人の買い物はA社のカード・サービスで支払い、自宅のネット料金や水道光熱費は○○銀行の口座から支払うようにする
事業用 □□銀行 普通預金口座 B社のカード(※) B社のサービス お店の仕入の際はB社のカード・サービスを使い、お店の水道光熱費は□□銀行の口座から支払うようにする

※ 法人カード・ビジネスカードではなく、個人名義の一般的なクレジットカードとして作成したものでも、事業用として使い分けていれば可

個人用のクレジットカードでお店の仕入を支払った場合の仕訳例

前述のように使い分けるのが基本ではあるものの、例えばスーパーが混んでいて、レジを2回通すのは憚られ、自家用と事業用の混ざった食材の買い物を、よりポイント還元がお得な個人のクレジットカードで支払ってしまったということもあるかもしれません。 この場合は、レシートから事業用のものを特定し、以下のように処理を行います。

例題
レシートには次のように明細が印刷されていて、そのうちキャベツと牛肉が事業用である。内消費税は軽減税率8%である

品名 価格(税込)
トマト 500円
ニンジン 400円
キャベツ 1,000円
豚肉 1,000円
牛肉 3,000円
合計 5,900円
内、消費税額(軽減税率8%) 437円

処理方法

  1. 上記レシートから個人分の合計額と事業分の合計額を計算します。このレシート上も、どれが個人用でどれが事業用かを手書きで書き添え保管します。
    • 個人分:トマト500円 + ニンジン400円 + 豚肉1,000円 = 合計1,900円(内消費税141円)
    • 事業分:キャベツ1,000円 + 牛肉3,000 = 合計4,000円(内消費税296円)
  2. クレジットカード支払いの場合、会計仕訳上の支払先はスーパーではなくA社となる。そして、お店(事業)から見ると、その支払いを事業主に借りているという扱いになり、仕訳(税込会計)としては以下のようになります。
  3. 借方 貸方
  4. なお、事業主借勘定は、残高が存在しても論理的には間違いではありませんが、残高が残っていて、かつ使用頻度が高い場合は、確定申告の際などにチェックされる可能性がありますので極力使用を控え、残高を残さないようにしておく方が無難です。A社への支払い引き落とされたらお店の銀行口座へ振り替える(またはお店の現金を入金する)ことで、事業主借勘定の残高を減らすことができます。
  5. 借方 貸方

事業用のクレジットカード支払いに個人の買い物が混ざっている場合の仕訳例

今度は逆に、上記の買い物を事業用のクレジットカードで支払った場合を説明します。

処理方法

  1. 上記レシートから個人分の合計額と事業分の合計額を計算します。このレシート上も、どれが個人用でどれが事業用かを手書きで書き添え保管します。
    • 個人分:トマト500円 + ニンジン400円 + 豚肉1,000円 = 合計1,900円(内消費税141円)
    • 事業分:キャベツ1,000円 + 牛肉3,000 = 合計4,000円(内消費税296円)
  2. クレジットカード支払いの場合、会計仕訳上の支払先はスーパーではなくB社となり、後日口座振替が予定されるのでいったん買掛金として処理します。個人の買い物分については、お店(事業)から見ると、その支払いの一部は事業主に貸しているという扱いになり、事業外の支払いのため未払金で処理します。仕訳(税込会計)としては以下のようになります。
  3. 借方 貸方
  4. 後日、口座振替が発生した時点で買掛金及び未払金が清算された旨の仕訳を行います。
  5. 借方 貸方
  6. 事業主個人が事業主貸分に相当する金額を事業用銀行口座に振り込んだ場合、お店(事業)側からみると、事業主への貸付が返済されたという処理になります。
  7. 借方 貸方

ポイント還元の取り扱い~即時充当と後日充当

さて、クレジットカードを利用した動機は「ポイントの還元がお得だったから」でした。それでは、獲得したポイントは会計上どのように扱えばいいのでしょうか?

会計処理上、ポイントは「もらった時」ではなく「使った時」に処理することが原則になっており、A社が税込金額の10%相当のポイントを還元するキャンペーンを行なっていた場合、その還元方法が即時充当(会計時の値引き)なのか、後日充当なのかで処理方法が変わってきます。以下、個人用のクレジットカードを使用した場合で解説します。

  • 即時充当の場合は、次のような処理となります 支払の総額5,900円に対してポイント還元による即時充当値引きが590円分行われました。そのなかで、お店の仕入れ4,000円分に対しては、400円分の値引きが行われたとみなして取り扱います。
  • 借方 貸方

    別解:値引きではなく、ポイント値引き部分を雑収入として処理する方法もあります

    借方 貸方
  • 後日充当の場合は、ポイントを仕入時点では使用していないため、その仕訳は
  • 借方 貸方

    となります。
    なお、後日個人用のA社クレジットカードには、支払総額の5,900円に対する590円相当のポイント還元が行われることになります。このポイントには事業用の仕入による獲得分が含まれていますが、個人の買い物で使用した場合は仕訳上何も処理する必要はありません。一方、次回仕入をしたときに今回事業で獲得したポイントを使用して支払う場合は、ポイントで支払った分を雑収入として計上しましょう。

ポイントにより支払う額が当初金額より少なくなる場合、値引きなのか、ポイントによる支払なのかは受け取ったレシートや請求書の表記から判断しましょう。ポイントを使用した値引きであってもポイントを支払いに使った場合であっても支払う金額は同じですが、会計処理は異なることに注意が必要です。

電子マネー・QRコード決済について

電子マネー、QRコード決済は、基本的に事前にチャージして、それを支払いに使用するという使い方が多いと思います。例えばコンビニのATMなどで事業用の現金5,000円を事業用に使っているQRコード決済にチャージしたという場合は、現金で「貯蔵品」を購入したという解釈の仕訳を行います。

借方 貸方

そして、事業用のQRコード決済で4,000円分の食材の仕入れを行なった場合は、貯蔵品で支払ったという仕訳を行います。

借方 貸方

なお、一部のサービスでは利用の事後に使用分を支払いというものがあります。この場合は、ここまでご紹介してきたクレジットカードと同じ考え方で仕訳処理をします。
電子マネー、QRコード決済の仕訳には、貯蔵品としての仕訳と、紐づけているクレジットカードと銀行口座が関係しての事後清算部分と、そしてポイントの処理が複合的に必要になりますので、やはり個人用と事業用を準備して使い分けるのが望ましいでしょう。

まとめ

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