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食材高騰!飲食店が利益を確保するためのメニューと価格の改定を解説

食材高騰のイメージ

2022年は新型コロナウイルス影響の緩和による需要増、ウクライナ情勢、急速な円安等を背景に食材費、光熱費が急上昇し、飲食店経営を圧迫しています。そこでこのコラムでは、原価率の上昇局面で飲食店が利益を確保するためのメニューと価格の改定について解説します。

物価の動向

総務省統計局が毎月集計し公表している消費者物価指数(CPI)は、いくつかの国でコロナ対策の緩和がされ始めた2021年4月頃から需給バランスの崩れにより上昇の兆しを見せ、2022年に入ってウクライナ情勢による供給懸念、米国金融政策の影響による急速な円安などでさらなる上昇が継続しています。

参考ページ:

外食産業全体の対応状況をみると、2021年中は新型コロナウイルス影響による集客難状況もありメニューの値上げは限定的な動きだったものの、物価高騰の継続や加速に伴い2022年に入って、ラーメン、牛丼、カレー、回転すし等、大手チェーンの広範に価格改定の動きが拡がっています。

個人店が利益を確保するための検討ポイント

個人経営の飲食店は、大手チェーンとはスケールメリットを活かした仕入などの調達力の差から価格競争は困難なため、もともと付加価値や差別化を行なって、やや高めの価格設定をしている場合のほうが多いと思われます。そこでまずは、以下の項目を組み合わせて検討し、お客様離れを防ぎながら利益を確保できるかを考えるのがよいと思います。

食材変更

ウクライナ情勢に伴いロシア上空の飛行が困難になったことから、ノルウェー産サーモンの価格が高騰し、銀鮭で代替しているケースがあるようです。
大手チェーンの場合、基本的には均一メニューによる品ぞろえと品質への安心感という点が損なわれることは弱点になりますが、個人店においては、美味しいと満足いただける料理を提供できさえすれば、その点についてのお客様の許容度は比較的高いと思われます。
したがって、元々美味しい料理を差別化のポイントにしているお店では、より安い食材で現状の価格帯のメニューを成立させることができれば、利益は確保できます。

ボリューム変更

スーパーの小売商品では内容量を減らして価格を据え置く対応をする場合があります。例えば焼肉店であれば、もともと「1人前」の定義が曖昧だったりするため、同じような対応をステレス的に行うことは可能かもしれませんが、常連のお客様が離れてしまうリスクがあります。

セットメニュー/コースメニュー

食材変更やボリューム変更による対応を単品メニューのなかで消化できない場合は、セットメニューやコースメニューの内訳の中で実現するとよいでしょう。
メインディッシュは変更せず、小鉢を変更する。利益率の高いドリンクやデザートをなど新たに付帯して価格をアップするなど、組み合わせることで単品ごとの食材変更やボリューム変更を目立たせず、利益を確保する工夫が可能です。

価格改定のテクニック

レストラン業態などでは、上記でご紹介した食材変更やボリューム変更を、セットメニュー・コースメニューとの組み合わせの中で検討しやすいと思われます。
一方で、セットメニューやコースメニューが主体でない業態の場合は、単品ごとの価格改定によって、お店全体としての利益を確保する必要があります。この際、全ての商品を一律に価格の見直しするとお客様の心理的な負担は大きくなります。そのため、価格の見直しをする商品はなるべく少ない方がいいです。そこで、商品ごとに店舗全体の原価率への影響度の高さを分析する方法をご紹介します。(店舗全体の原価率は、以下「全体原価率」といいます。)

  1. 1ヶ月間における店舗の商品ごとに売上構成比率(単品売価×単品販売数÷売上高)と原価率(原価÷売価)を計算して下さい。
  2. 売上構成比率と原価率を掛け合わせて下さい。
  3. そうすると、商品ごとに全体原価率への影響度の高さが「全体原価率への影響度=売上構成比率×原価率」の式で算出できます。

例として、商品Aの売上構成比が10%、原価率が50%とすると、全体原価率への影響度は「10%×50%=5%」です。そして、この商品Aの原価率を40%に低下させると、全体原価率への影響度は「10%×40%=4%」になります。この商品Aを基にシミュレーションしてみましょう。店舗の売上高1000万円、原価300万円とします。

比率 金額
全体原価率への影響度5% 商品A売上構成比 10% 100万円
商品A原価率 50% 50万円
全体原価率への影響度4% 商品A売上構成比 10% 100万円
商品A原価率 40% 40万円

商品Aの全体原価率への影響度が1%低下すると、原価が10万円低下します。

商品Aの全体原価率への影響度5% 商品Aの全体原価率への影響度4%
売上高 1000万円 1000万円
原価 300万円 290万円
原価率 30% 29%

商品Aの原価が10万円低下すると、店舗の原価率が1%低下します。

つまり、ある商品の全体原価率への影響度を1%低下できると、店舗の原価率が1%低下するのです。(なお、シミュレーションでは、わかりやすくするために原価率を低下させましたが、価格の見直しをして売上を高める場合でも考え方は同じです。) お客様の心理的負担を少なくしながら価格の見直しを行うためには、全体原価率への影響度が高い商品に絞り込んでみて下さい。そうすると、価格の見直しをする商品が少なくてもお店全体として利益の確保を行うことができるのです。

次に、全体原価率への影響度の高い商品を上位「30アイテム」をフードとドリンク合わせて抽出してみて下さい。人気メニューがズラッと並んでいるはずです。
その中から価格の見直しをする商品を選びましょう。以下の2点を基準に選んでみて下さい。

①店舗の“ウリ”に該当しない商品

店舗の“ウリ”になる商品は、価格の見直しをすると競合店との競争力が大きく低下してしまう恐れがあります。特に、1番商品や主力カテゴリーの商品は集客力が強いので、できるだけ価格の見直しをしないようにしましょう。
店舗の“ウリ”に該当しない商品とは、焼き鳥居酒屋ならば焼き鳥以外の商品です。ただし、店舗の“ウリ”が「つくね串」で主力カテゴリーとしている場合は、「つくね串」以外の焼き鳥商品を価格の見直しの対象にすると競争力は低下しにくいです。

②価格弾力性の低い商品

価格弾力性の低い商品とは、価格の見直しをしても販売数や集客力が低下しにくい商品のことです。これは、外食店として定番化している商品があてはまります。例えば、居酒屋だと鶏の唐揚げやフライドポテト、シーザーサラダ、枝豆などです。比較的どこの店舗でも品揃えをしており、認知度が高いです。そのため、お客様からすると馴染み感があり、販売促進をしなくても出数がある商品です。

価格の見直しをする場合は、全体原価率への影響度の高い商品の中から、店舗の“ウリ”に該当せず、価格弾力性の低い定番商品を優先的にしてみて下さい。お客様の心理的負担を少なくすることができるので、価格の見直しによる集客力の低下も少なくできます。

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