- 利益アップ・コスト削減
飲食店経営は難しくて地獄なのか?
Googleで「飲食店経営」と検索すると、「難しい」「地獄」といった単語と検索結果が並んでいます。信頼できる調査や統計から利益率、廃業率などの関連する事実関係をできるだけ定量的にまとめました。
前提
前提として、各統計は調査対象や集計方法が異なりますので、厳密に横並びで数値を整合、一致させることが困難です。あくまで信頼に足ると考えられる各調査や統計から傾向を読み取ろうとする主旨ですのでご了承ください。
例えば、飲食業は多くの統計において「宿泊・飲食サービス業」という分類で集計されていて、純粋に飲食店のみでの集計結果は示されている場合と、示されていない場合があります。
このコラムでは、飲食業のみで集計されている場合にはその値を、そうでない場合は、「宿泊・飲食サービス業」の値を紹介しています。
黒字のお店は33.6%
日本政策金融公庫による「小企業の経営指標調査」では、小規模飲食店に関する2019年度の経営状態が調査されています。当該年度は新型コロナウイルス影響が小さいと考えられるため、平時における状況を知るという意味では、好都合といえるでしょう。その調査の結果から主要集計を抜粋してみました。
業種分類 | 調査数 | 内、黒字企業 | 黒字企業割合 | 黒字企業平均 | |
---|---|---|---|---|---|
店舗面積3.3㎡あたり売上高(千円:年間) | 売上高経常利益率(償却前) | ||||
一般食堂 | 98 | 27 | 27.6% | 1,716 | 5.4% |
日本料理店 | 179 | 42 | 23.5% | 2,275 | 6.2% |
西洋料理店 | 139 | 50 | 36.0% | 2,501 | 4.8% |
中華料理店 | 187 | 82 | 43.9% | 2,533 | 6.4% |
朝鮮料理店 | 46 | 16 | 34.8% | 1,724 | 1.1% |
カレー料理店 | 41 | 29 | 70.7% | 2,617 | 3.2% |
そば・うどん店 | 66 | 14 | 21.2% | 1,701 | 8.1% |
すし店 | 97 | 29 | 29.9% | 3,055 | 6.7% |
喫茶店 | 50 | 10 | 20.0% | 2,633 | 4.9% |
お好み焼き屋 | 21 | 7 | 33.3% | 4,975 | 5.5% |
ハンバーガー店(※) | 5 | 2 | 40.0% | - | - |
料亭(※) | 23 | 2 | 8.7% | - | - |
バー・キャバレイ・ナイトクラブ | 65 | 24 | 36.9% | 2,972 | 5.0% |
スナック | 25 | 7 | 28.0% | 1,790 | 3.9% |
酒場・ビアホール | 438 | 157 | 35.8% | 2,510 | 5.3% |
計 | 1480 | 498 | 33.6% | 平均 | 5.1% |
黒字企業は33.6%となっています。差し引きすると、66.4%の飲食店は赤字ということになります。
黒字のお店の平均利益率は5.1%
上記の表では、黒字企業の【売上高経常利益率(償却前)】も抜き出しています。利益率について売上高経常利益率(償却前)を抜き出したのは、償却後の値だと確定申告に当たって開業費の任意償却などで利益調整されている可能性があるので、償却前のほうがお店の実態としての利益に近いと考えたためです。
黒字企業の平均利益率は5.1%となっています。例えば1,000円の料理を日に50皿、31日間お客様にお出しすると155万円の売上となりますが、食材費や水道電気ガス代、バイトの給料にお店の家賃などを差し引いて、経営者の手元に残る利益は8万円弱という計算になります。
飲食店経営者の1週間の平均休暇日数は1日以下が67%
大同生命が全国約12,000社の中小企業経営者を対象に定期的に実施している「大同生命サーベイ」の“経営者の労働実態(2022年2月度)”レポートによると、宿泊・飲食サービス業経営者の1週間の平均休暇日数は1日以下との回答が67%で、全業種中、最も休暇日数が少ない結果となっています。
開業5年後の廃業率は14.7%
日本政策金融公庫による「新規開業パネル調査」では、新規開業企業の開業後の変化をとらえるため5年間追跡するパネル調査が行われています。
2016年に開業した企業を2020年12月末時点で調査した結果によると、飲食店・宿泊業の廃業率は全集計業種中、最も高い14.7%になっています。
2011年に開業した企業を2015年12月末時点で調査した結果によると、飲食店・宿泊業の廃業率は全集計業種中、最も高い18.9%になっています。
2020年は新型コロナ禍が襲った年で、その12月という点をどう捉えるかですが、通常営業する上では大変厳しい状況ではあったものの、反面、休業協力金・支援金などの行政補助も手厚く行われたことから、廃業率としては逆に下支えになった可能性があります。
まとめ
このコラムでここまで見てきた内容から、飲食店経営は以下のような傾向にあるとまとめることができます。
観点 | 相対的傾向 | 指標率 |
---|---|---|
黒字化 | 困難 | 黒字のお店は33.6% |
利益率 | 低い | 平均利益率は5.1% |
労働時間 | 長い | 休みは週1日以下が67% |
廃業率 | 高い | 5年後の廃業率は14.7% |
もちろん、大成功している飲食店もたくさんありますので、一概に地獄とは言えないものの、厳しいことは確かだと思います。儲かっているとしても、自身があまりにも多忙を極めているとすれば、開業の満足度は低いものになってしまうでしょう。
したがって、飲食店経営を志す場合は、売上から考えるのではなく、飲食店経営にどれくらいの労力を割いて、いくらくらいの利益を獲得したいのかというところから出発して、以下のようにように逆算して考えてください。
- その利益を獲得するために必要な売上
- その売上を獲得するために必要な客数と客単価
- 客数を獲得できるお店のコンセプト確立と商圏の裏付け
- 客単価と整合性のとれる料理とサービスの提供
- 既存の周辺店に加え、新たなお店と競合しても、差別化を図れるか
これらを総合して、少なくともご自身が確信を持てて、融資を相談する金融機関も納得する「事業計画書」を描ききって開業することが大切だといえるでしょう。
当サイトHANJO TOWNでは、飲食店の開業を目指している方に向けて、店舗コンセプトの検討、開業資金調達(融資獲得)から内・外装工事、保健所への申請からオープンまで、飲食店開業準備を流れに沿って解説した特設ページを開設しておりますので、ぜひ参考にしていただければ幸いです。