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個人事業の飲食店経営の仕組み・構造を理解しよう!

飲食店経営のイメージ

総務省統計局が毎年公表している「個人企業経済調査」は、個人事業主の経営実態の手がかりを得られる貴重な調査です。統計表を参照すると産業中分類“飲食サービス業”の単位で、1企業当たりの売上高、売上原価、給与賃金、営業利益といった営業状況や、経営者の年齢、事業経営上の問題点など、個人事業の飲食店経営の仕組み・構造が毎年集計されています。

はじめに

個人企業経済調査は、全国の個人経営の事業所(個人企業)のうち,約4万事業所を対象に,事業主及び従業員に関する事項,事業経営上の問題点,1年間の営業収支などの経営実態を調査し,各種行政施策の基礎資料を得ることを目的として,毎年実施されています。 さて、飲食店経営は新型コロナ禍において、収益源の中心が支援金・協力金となってしまう特殊な状況となりました。そこで本コラムでは、主に2019 年を調査対象としている調査年2020年の「個人企業経済調査」の結果によって、飲食店の一般的な仕組み・構造を見ていきたいと思います。

参考ページ:

営業状況

2019 年を調査対象としている2020年の「個人企業経済調査」の、“産業中分類別営業状況 -全国”における、飲食サービス業の営業状況は以下の通りです。

※ 事業主の家族で有給の人の給与が含まれる
図表出所:「2018年度新規開業実態調査」からみる少額開業の実態 よりHANJO TOWN作成
主要営業状況等(1企業当たり) 全産業(単位:千円) 対売上割合 飲食サービス業(単位:千円) 対売上割合
売上高 13,410 - 10,580 -
売上原価 5,805 43.3% 4,347 41.1%
売上総利益 7,605 56.7% 6,233 58.9%
給料賃金 1,252 9.3% 1,272 12.0%
営業経費 4,196 31.3% 3,593 34.0%
営業利益(※) 2,156 16.1% 1,368 12.9%
新規設備取得額 211 1.6% 156 1.5%
中古設備取得額 36 0.3% 19 0.2%

全産業と飲食サービス業を比較すると、まず営業利益率が相対的に低い点が目に留まります。その理由を他の項目から紐解いていくと、特に給料賃金や営業経費が営業利益率を圧迫している構造となっています。

従業員に関する指標を見てみましょう。

図表出所:2020年の「個人企業経済調査」よりHANJO TOWN作成
従業員に関する指標(1企業当たり) 全産業 飲食サービス業
従業者数 2.64人 3.31人
うち事業主の家族で無給の人 0.26人 0.33人
うち常用雇用者 1.23人 1.72人
年間総採用者数 0.29人 0.57人
年間総離職者数 0.18人 0.38人
従業者1人当たりの売上高 5,080千円 3,196千円
従業者一人当たりの営業利益 817千円 413千円

全産業と飲食サービス業を比較すると、従業者数が相対的に多い一方で、1人当たりの売上高は約2/3、営業利益は半分の計算になっています。
また、年間総採用者数と年間総離職者数を比較すると共に数値が高く、採用・教育コストもかかっているであろうことが想定されます。

以上を総合すると、飲食店は典型的な労働集約型産業であり、しかも個人事業規模の取り組みでは従業員が増えるほど生産性が減じる傾向があると考えられるので、儲かる飲食店を作るためには、できるだけ省人で運営できる仕組み作りが必要になるといえるでしょう。

経営者像

次に、同調査で集計されている、飲食サービス業の経営者像を見ていきましょう。
経営者の年齢について、飲食サービス業は相対的に40代がやや多く、80歳以上は少ない印象ですが、ほぼ同じような年齢構成と考えられます。

図表出所:2020年の「個人企業経済調査」よりHANJO TOWN作成
事業主の年齢階級 全産業 飲食サービス業
30歳未満 0.1% 0.2%
30~39歳 2.5% 3.0%
40~49歳 10.5% 13.7%
50~59歳 16.8% 16.6%
60~69歳 27.1% 28.7%
70~79歳 31.7% 31.5%
80歳以上 11.4% 6.3%

経営者が考えている事業経営上の問題点(択一回答)を見ていきます。

図表出所:2020年の「個人企業経済調査」よりHANJO TOWN作成
事業経営上の問題点 全産業 飲食サービス業
大手企業・同業者との競争の激化 9.8% 4.0%
需要の停滞(売上の停滞・減少) 34.3% 30.5%
製品・賞品ニーズの変化への対応 2.0% 0.8%
建物・設備の狭小・老朽化 8.8% 8.1%
資金繰りの悪化 3.6% 4.6%
従業員の確保難・人材不足 3.7% 3.9%
人件費の増加 1.3% 1.9%
後継者難 8.9% 5.8%
原材料価格・仕入価格の上昇 4.8% 11.7%
販売価格の低下・値引要請 1.4% 0.2%
家賃・地代の上昇 0.8% 1.2%
コストの増加を販売価格に転嫁できない 3.7% 6.7%

傾向が明確に違うのは、原材料価格・仕入価格の上昇についての課題認識で、飲食サービス業は相対的に外部環境に左右されやすい業種業態といえるでしょう。
一方で、一般に飲食店は参入障壁が低く競争が激しいといわれますが、当事者である経営者は大手企業や同業者との競争をそれほどは課題と感じていないようです。

パソコンの使用状況の集計もありますので見てみましょう。

図表出所:2020年の「個人企業経済調査」よりHANJO TOWN作成
パーソナルコンピュータの使用 全産業 飲食サービス業
インターネットに接続している 39.9% 24.0%
インターネットに接続していない 3.6% 2.3%
事業で使用していない 53.0% 68.7%
使用を検討している 3.6% 5.0%

スマホ等のモバイル機器による代替関係は本調査からは不明なものの、パソコンの使用度合いをIT活用度合いの主要な目安と考えると、飲食サービス業は労働集約産業でありながら、ITを利用して生産性を高めようという取り組みが相対的に遅れているといえるでしょう。

最後に、全業種、飲食サービス業双方とも特に顕著な差がない、比較の意味が見いだせないなどの理由から作表は省略しましたが、本調査に存在し、飲食サービス業において関心が高いと思われるデータを紹介しておきます。

  • チェーン組織への加盟は2%です。
  • 土地・建物ともに自己所有は45.9%です。
  • 土地・建物ともに借用は38.6%です。
  • 1年間の営業(操業)日数が300日以上の店舗が47.4%です。
  • 今後の事業展開として、現状のままを維持したい旨の回答が54.1%です。
  • 法人化の予定がある企業は1.6%です。

まとめ

このコラムで見てきた個人事業の飲食店の構造は、以下のようにまとめられます。

観点 構造の相対的傾向
営業利益率 低い。特に人件費が圧迫要因
従業員1人当たりの営業利益 低い。個人事業規模の取り組みでは従業員が増えるほど生産性が減じている可能性が高い
経営者年齢 60代、70代の合計で60.2%と過半の割合を占める
事業経営上の問題点 原材料価格・仕入価格の上昇など相対的に外部環境に左右されやすい
パソコンの利用割合 低い。68.7%が未使用

翻って、示唆としての儲かる飲食店の仕組み作りのためには、ITの積極的活用によって外部環境の情報収集とその対応を図りながら、同時にできるだけ省人化された店舗運営を実現することがポイントになりそうです。

また、このコラムでは、主に飲食店の利益構造の観点が中心となりましたが、トップラインとしての売上獲得は儲かる飲食店の前提となります。それは「経営者が考えている事業経営上の問題点」においても最大の課題として挙げられています。

当サイトHANJO TOWNでは、トップラインとしての売上獲得を考えるうえでの客数アップ、客単価アップのヒントに加え、ITを用いた業務の具体的効率化・省人化手法まで、470本を超えるコラムにて具体的ノウハウを無料で公開しております。儲かる飲食店作りの参考にしていただければ幸いです。

参考コラム:
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