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飲食店のための「ものづくり補助金」解説
「ものづくり補助金」は正式には「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」という名称で、飲食店も利用することができます。
このコラムでは、飲食店がこの補助金の利用を検討する際にポイントになると考えられる点を解説しています。
なお、この補助金には、単一の事業者が申し込む〔一般型〕〔スローバル展開型〕と、
30者以上の中小企業を支援するサービス運営者向けの〔ビジネスモデル構築型〕があります。本コラムでは〔一般型〕のみを取り上げています。
また、本コラムは2020年8月20日時点の情報を元に執筆しています。新型コロナウイルスの影響に伴い、
補助金の内容や申込方法等が変更される可能性がありますので、実際に利用される際は公式サイト等の最新情報も必ずご確認ください。
補助金の概要
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金」(以下、このコラムでは略称の「ものづくり補助金」にて記載します)の公式情報は、
ものづくり補助事業公式ホームページ ものづくり補助金総合サイトに集約されています。
http://portal.monodukuri-hojo.jp/index.html
そして、このサイトの中に今般の新型コロナウイルス影響支援も織り込まれた、
ものづくり補助金概要説明資料が掲載されています。
http://portal.monodukuri-hojo.jp/common/bunsho/ippan/3rd/gaiyou_0522.pdf
このコラムでは、これらを手がかりに、飲食店が「ものづくり補助金」の利用を検討するうえでポイントと考えられる点をまとめています。
補助対象者
補助対象者は、中小企業または個人事業で、一定規模以下の事業者となっています。
一定の規模については業種別に下記のように定められています。
業種 | 資本金 | 従業員数(常勤) |
---|---|---|
製造業、建設業、運輸業 | 3億円 | 300人 |
卸売業 | 1億円 | 100人 |
サービス業(ソフトウェア業、情報処理サービス業、旅館業を除く) | 5,000万円 | 100人 |
小売業 | 5,000万円 | 50人 |
ゴム製品製造業(自動車又は航空機用タイヤ及びチューブ製造業並びに工業用ベルト製造業を除く) | 3億円 | 900人 |
ソフトウェア業又は情報処理サービス業 | 3億円 | 300人 |
旅館業 | 5,000万円 | 200人 |
その他の業種(上記以外) | 3億円 | 300人 |
情報出所:公募要領〔一般型(特別枠・事業再開枠含む)〕(4次締切分)
「ものづくり補助金」は、その略称から製造業のみを対象とした補助金のように思われがちですが、飲食店はサービス業の分類で対象になります。
補助対象事業の類型及び補助率等
飲食店が新型コロナウイルス影響を乗り越えるために特に利用したいのは特別枠です。
公募要領のなかに記載されている“B類型:非対面型ビジネスモデルへの転換”の例示では、
・自動精算機・キャッシュレス端末の導入、
・店舗販売からEC販売へのシフト
への費用が1/6以上含まれ、単価50万円以上の設備投資を含む取組みの場合は、1,000万円を上限に取組み全体の経費の3/4を補助するとしています。
さらに、特別枠に採択された事業者は、上限50万円の定額補助が上乗せされるので、
「ものづくり補助金」では、最大で1,050万円を受け取ることができます。補助金は返済不要です。
補助対象事業の要件と採択事例から考える補助対象経費例
飲食店が利用するという観点では、事業計画期間において、
“B類型:非対面型ビジネスモデルへの転換”に要素を含んだ50万円以上の設備投資を含む
・事業者全体の付加価値額を年率平均3%以上増加させ、
・それを従業員に給与として還元する(給与支給総額を年率平均1.5%以上増加)
させる3~5年の事業計画のための取組みである必要があります。
といわれても、ここから紐解いていくのは非常に難しいと思われますので、実際の採択事例を参照するほうが分かり易いと思われます。
採択事例は、ものづくり補助事業関連サイトで検索することができます。
ものづくり補助事業関連サイト「もの補助成果事例検索」ページ
http://www.monodukuri-hojo.jp/search.aspx
「もの補助成果事例検索」ページでは、地域毎業種毎の採択事例を検索することができます。 飲食店の場合は“飲食店”に加え、例えば非対面型ビジネスモデルへの転換としてテイクアウトの取組みを考えている場合には “飲食料品小売業”を含んで検索すると手がかりになるでしょう。
実際に上記の検索を行なうと、新メニュー提供のための調理設備や、既存商品の提供品質を高めるための冷蔵設備の導入といった、
飲食店にとって直感的に分かり易い事例が掲載されています。これらをヒントにすると、例えば次のような取組みは有効と考えられます。
・非対面型ビジネスモデルへの転換を含む事業拡大 ・・・ 新型コロナウイルスに関連してテイクアウト販売を開始して、売れ筋が見えてきたため、
このテイクアウト商品の生産効率を高めると同時に商品価値もアップ、販売拡大することでお店全体の付加をアップし、従業員にも還元する。
・原材料費・外注費 ・・・ 商品価値アップのために試作品を開発する。デザイン性が高く保温性の高いパッケージの外注開発を含んだ試作品開発を行なう。
・機械装置 ・・・ いままで当該テイクアウト商品は既存厨房設備で調理していたが、製造効率をアップするため専用の機器(単価5万円以上)を導入する。
・広告宣伝・販売促進費 ・・・ 新商品の認知拡大のため、POPやホームページを作成する。
・感染防止対策費 ・・・ 既存のイートイン営業を再開するため、客席を間仕切るアクリル板の設置や、キャッシュレス端末の導入など「外食業の事業継続のためのガイドライン」に沿った対策を実施する。
「ものづくり補助金」を利用するには、このようなストーリー性のある取組みを事業計画として検討する必要があります。
応募手続き等の概要
「ものづくり補助金」の手続きは基本的にすべて電子申請システムによって行われます。
そのなかで特に気をつけたい点が、その電子申請システムを利用するために、
政府が運営する別のサイトで「GビズIDプライム」を取得しログインする必要がある点です。
gBizID サイト
https://gbiz-id.go.jp/top/
GビズIDには“エントリー”と“プライム”が存在しますが、 上述の通り「ものづくり補助金」の手続きに必要なのは“プライム”です。 「GビズIDプライム」の作成取得には、印鑑証明書(個人事業主は印鑑登録証明)に加え、 経営者本人認証時に利用するスマートフォン(携帯電話)が必要になり、 申請後利用できるまで2週間程度の期間が必要となるので、 「ものづくり補助金」を利用する場合には、申請内容の検討と並行して早めに「GビズIDプライム」の申込を行なっておいたほうがいいでしょう。
無事ログインできたら、基本的には検討した事業計画内容を画面の案内に沿って登録していくことになりますが、 その際、直近2ヵ年分の決算書(個人事業主の場合確定申告書)、賃金引上げ計画書面などを 添付書類としてPDF化のうえアップロードする必要もありますので準備しておくと良いでしょう。
そのほか、詳細についてはマニュアルが公開されていますので参照なさって下さい。
ものづくり補助金総合サイト「電子申請」ページ
http://portal.monodukuri-hojo.jp/denshi.html
採択後の流れ
「ものづくり補助金」に申込、採択された場合、設備などへの投資は交付決定日から10ヶ月間で集中的に実施し完了する必要があります。 実施状況の報告や補助金を受けとるためのやり取りは「J グランツ」というサイトを中心に行ないます。
ものづくり補助金総合サイト「補助事業の手引き」ページ
http://portal.monodukuri-hojo.jp/hojo.html
jGrants
https://jgrants.go.jp/
一般的な補助金では、補助金の受け取りは取組みがすべて完了し(費用の全額を一旦事業者が支払って)、
後日、補助率分の補助金を受け取るという流れになりますが、
「ものづくり補助金」では、新型コロナウイルスに関連した“事業再開枠”など、
事務局に認められると概算払いを受けることも可能です。
まとめ
以上、このコラムでは、飲食店が「ものづくり補助金」を検討する場合に想定されるポイントをまとめました。 新型コロナウイルスに関連して開始したテイクアウト販売の規模を拡大したり、感染拡大が一服した際、 もともと予定していた新規出店を推進したりといったようなケースで、利用を積極的に検討したい制度といえるでしょう。
なお、同じ取組みに複数の補助金を利用することはできませんが、別に「小規模事業者持続化補助金」という制度もあります。 補助上限額は本体100万円+事業再開枠50万円と小額になりますが、賃上げ表明などが必須ではなく、採択率も比較的高いため、 金額的に小規模な取組みになることが想定される場合は、こちらの利用を検討されると良いでしょう。
飲食店のための「小規模事業者持続化補助金(コロナ特別対応型)」解説
https://tenpo.casio.jp/column_industry/detail257.html