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飲食店の個人事業主が知っておきたい令和3年分確定申告の変更点
本コラムでは飲食店の個人事業主が知っておきたい、令和2年分と比較して令和3年分の確定申告で変更になっているポイントについて解説しています。なお、個別の取り扱いについてすべてを網羅することはできませんので、実際に確定申告をする際は、所管の税務署などに必ずご確認ください。
主要な変更内容の一覧
令和2年分と令和3年分の確定申告を比較した変更内容は、「令和3年度 所得税の改正のあらまし」として国税庁ホームページに公開されています。
そのうち、飲食店の個人事業主に当てはまる可能性が高いものをまとめました。
分類 | 項目 | 概要 |
---|---|---|
事業所得等関係 | 中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除 | 適用期限が2年間延長され、令和3年4月1日以後に取得した資産にも適用されます |
その他の所得税関係 | 保育その他の子育てに対する助成について、所得税を課さない | 子育てに関連して受けた助成は非課税になります |
国税通則法等 | 税務関係書類において、原則として、押印を要しないこととする | 確定申告書類への押印が不要になります |
以下、各事項について、該当する可能性があるケースの具体例やポイントを記載します
ポイント1:機械等の特別償却又は所得税額の特別控除
中小事業者が機械等を取得した場合の特別償却又は所得税額の特別控除は適用期限が2年間延長され、令和3年4月1日以後に取得した資産にも適用されることになりました。
これにより、例えば新型コロナ対策として令和3年4月1日以後、店内の換気設備や、テイクアウトメニュー調理のために新規導入した調理器具、追加購入したレジスター、移動販売のために準備したキッチンカー等についても取得価格が一定以上のもの、または規格を満たす新品を導入した場合は対象となります。コロナ禍の中開業した飲食店でも、必要に応じて利用することができます。
適用対象資産
- 機械及び装置で1台又は1基の取得価額が160万円以上のもの
- 製品の品質管理の向上等に資する測定工具及び検査工具(平成24年4月1日以後に取得等をしたものに限ります。)で、1台又は1基の取得価額が120万円以上のもの
- (2)に準ずるものとして測定工具及び検査工具の取得価額の合計額が120万円以上であるもの(1台又は1基の取得価額が30万円未満であるものを除きます。)
-
ソフトウェア(複写して販売するための原本、開発研究用のもの又はサーバー用のオペレーティングシステムのうち一定のものなどは除きます。以下同じ。)で次に掲げるいずれかのもの
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イ 一のソフトウェアの取得価額が70万円以上のもの
ロ その事業年度において事業の用に供したソフトウェアの取得価額の合計額が70万円以上のもの - 車両及び運搬具のうち一定の普通自動車(注)で、貨物の運送の用に供されるもののうち車両総重量が3.5トン以上のもの
特別償却又は所得税額の特別控除はどちらか一方を選んで適用を受けることになります。特別償却を行なう場合は、通常の減価償却に加えて基準取得価額の30%相当額を限度として減価償却費として計上することができます。
所得税額の特別控除では、基準取得価額の7%相当額を所得税額から控除できます。
青色申告では赤字を3年間繰り越せますので、令和4年の事業見通しも踏まえて判断するとよいでしょう。
ポイント2.:子育てに関連した助成の非課税扱い
従来から児童手当など国が全国一律の制度として設定したものは非課税とされてきた一方で、市区町村が独自に行っているベビーシッター代の助成などについては所得税法上の雑所得となり、申告の必要性が生じていましたが、令和3年度税制改正により、後者も非課税となりました。
助成を得てベビーシッターや認可外保育所を利用している場合に、納税上大きなメリットになります。
ポイント3:確定申告書への押印不要
新型コロナの影響や脱ハンコ化への潮流を踏まえ、令和3年4月1日以降、確定申告書への押印は不要になっています。実質的には令和2年分の確定申告でも押印は不要という解釈となっていましたが、令和3年分の確定申告より正式に押印不要になります。
なお、令和2年分の確定申告から書類提出の場合の青色申告特別控除は基本的に55万円となり、e-Taxを利用しないと65万円分の特別控除が受けられなくなっています。毎年、スマートフォンを利用した認証方法など強化拡充が図られていますので、ぜひ利用されるとよいでしょう。
当サイトでご紹介している飲食店向けクラウドソフト「HANJO会計」では、スマホでレシートを撮るだけで自動仕訳ができ帳簿が完成。画面の案内に沿って操作すれば各種控除も抜け漏れなく青色申告書を完成でき、e-Tax経由でスムーズに確定申告を完了することができます。
以下、令和3年分の確定申告の変更点ではありませんが、あらためて留意したい点を記載します。
その他、留意しておきたい点
新型コロナ関係の補助金・助成金・協力金は課税対象
令和2年分の確定申告の取り扱いと同様に、新型コロナに関連して実施された持続化給付金・家賃支援給付金・持続化補助金・雇用調整助成金・各自治体からの営業時間短縮要請への感染拡大防止協力金などは基本的には課税対象です。
確定申告では、営業外収入含めた「収入」から、営業のために必要な食材費・人件費・店舗の家賃に加え減価償却費などを事業の「必要経費」として差し引いて「事業所得」を計算し、ここからさらに経営者自身とその扶養家族における医療費や保険料は「所得控除」をすることができ、所得控除後の金額が「課税所得額」となり、最終的にその「課税所得額」に対して税金がかけられます。
したがって、補助金、助成金、給付金、協力金すべてを加味しても「課税所得額」がマイナスとなる場合は、課税は発生しません。一方で、受け取りを加味した上で黒字になる場合は、その黒字所得に対して課税が発生します。
例えばコロナ以前は赤字で確定申告をあまり意識する必要のなかったお店でも、これらの受け取りによってどのような採算となったか細かく計算しないと、申告漏れや、逆に余分な納付が生じてしまう可能性もありますので気を付けるようにしてください。
なお、補助金、助成金、給付金、協力金について、実際にどのような仕訳が必要になるかを別のコラムで詳しく解説しております。
前回(令和2年分)の確定申告で変更された主な項目とその概要
前回(令和2年分)の確定申告で変更された主な項目を以下にまとめました。前回は該当しなかったが、今回該当するものがあるかもしれませんので、参考としてください。
分類 | 項目 | 概要 |
---|---|---|
基礎控除関連 | 合計所得金額が2,400万円以下の人について、所得税の基礎控除額が改正される。 |
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青色申告特別控除の控除額の変更 | 複式簿記による記帳の場合の青色申告特別控除の控除額を引き下げ |
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配偶者控除・扶養控除の判定基準の変更 | 基礎控除額の引き上げに伴い配偶者控除や扶養控除の要件を変更 |
【配偶者控除】
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ひとり親に関する控除見直し | 男性向け寡夫控除の廃止と「ひとり親控除」の創設 |
以下の条件を満たす場合、婚姻歴があってもなくても35万円の控除が受けられる
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まとめ
以上、本コラムでは飲食店の個人事業主が知っておきたい、令和2年分と比較した令和3年分の確定申告の変更点等について解説しました。
なお、当サイトでご紹介している「HANJO会計」をお使いいただくと、スマホでレシートを撮るだけで自動仕訳ができ帳簿が完成。画面の案内に沿って操作すれば各種控除も抜け漏れなく青色申告書を完成でき、e-Tax経由でスムーズに確定申告を完了することができます。飲食店で想定される仕訳や確定申告の豊富なFAQを収録の上、電話によるサポートも付いています。利用開始の翌月末まで無料でお使いいただけますので、よろしければご利用ください。
サービスの詳細については、こちらをご覧ください。