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飲食店におけるバイト・パートの時給計算方法
開業したお店が軌道に乗って、いよいよ人手が足りないとなった段階で、アルバイトさんやパートさんの募集を検討する方も多いと思います。ただ、飲食店においてどのように時給を設定すればよいかも、はじめての場合にはなかなか難しいのではないかと思います。そうはいっても、分からないからといって、「これくらいかなぁ」といったような設定にしてしまうと、あとから経営を圧迫する要因となったり、労働基準法に抵触したりするケースもありますので注意が必要です。
そこで本コラムでは、飲食店におけるアルバイト・パートの時給設定方法について具体例を交えて解説します。
法定休日~原則休日制・変形休日制(4週4休)
労働基準法における「法定休日」とは、暦上の日曜日のことではありません。 労働基準法では、事業者に対して週1日又は4週を通じて4日(曜日は問いません)の休日設定を要件としています。この要件を踏まえて設定した日が「法定休日」になります。
法定休日は、お店全体として一律の曜日を決めても構いませんし(原則休日制)、従業員ごとに個別に日程を設定しても構いません(変形休日制:4週4休)。ただし、1ヵ月間毎日働かせて、事業者側が給与計算上最も有利な日を4日分選んで、後解釈で”この日があなたの法定休日だった”ということはできません。
原則休日制を採用する場合には、これまでの営業実績から、最も客入りが少ない曜日や、経営者自身がお店に立てる日を「法定休日」とするのが無難でしょう。万一、「法定休日」に周辺で大規模なイベントが開催される等でアルバイトさんを使う場合、その日は儲かることを当て込んで営業するのですから、むしろ割り増しすることを積極的に伝えて、士気を高めて、集客や接客の質を高めることに集中したほうがよいでしょう。
法定労働時間と時間外労働
例えば”うちの地域の市役所が開庁しているのが8時30分~17時なので、17時以降は残業代が必要だ”ということはありません。
労働基準法では、事業者が1日8時間を「法定労働時間」として設定することを要件としています。よって、例えば10時から仕込みや開店準備をはじめ、11時にランチ営業を開始するお店の場合、休憩45分も織り込んで、始業時間10時00分~終業時間18時45分という設定をしても問題ありません。その始業時間より前の時間、その終業時間より後の時間に働かせると時間外労働となり、通常の賃金の2割5分以上の割増賃金が必要となります。例えば、通常時給1,000円のアルバイトの場合、時間外労働時は1,250円以上の時給を支払う必要があります。
深夜業と割増賃金
深夜業とは、22時から翌日の早朝5時までの間の労働のことをいいます。通常の賃金の2割5分以上の割増賃金が必要となります。また、時間外労働と深夜業の両方に当てはまる労働をさせた場合は、割増賃金は両方を加算して支払う必要があります。
例えば先ほどの始業時間10時00分~終業時間18時45分のお店が23時まで深夜営業を行い、24時までに閉店準備を完了する場合、通常時給1,000円のアルバイトだと、22時以降の勤務に対して、時間外労働に対する割増250円と、深夜業に対する割増250円を加算し、1,500円の時給を支払う必要があります。(※時間外労働に対する割増の加算後の1,250円に対して2割5分の上乗せをする必要はありません)
なお、16時から仕込みや開店準備を始め17時にオープンし、23時まで営業し23時30分には完全に店じまいを終える居酒屋の場合、始業時間16時00分~終業時間24時45分としてしまえば時間外の割増は発生しませんが、22時以降、深夜業の割増は必要になります。
休日労働と割増賃金
「法定休日」に労働させた場合は休日労働となり、3割5分以上の割増が必要です。
例えば先ほどの始業時間16時00分~終業時間24時45分の居酒屋が、法定休日としている日に通常時給1,000円のアルバイトを働かせた場合、22時までは時給1,350円、22時以降は1,600円の時給を支払う必要があります。
ただ、「法定休日」は休日という定義なので始業時間16時00分~終業時間24時45分という設定がそもそも適用されない日になります。従って、この日に限って24時45分以降働いても、時給は1,600円でよく、時間外労働の割増250円を加算する必要はありません。
まとめとその他参考情報
飲食店の場合は営業日時が一般的な企業とは異なるため、時給の考え方は多少複雑ですが、このコラムが理解の一助になりましたら幸いです。
なお、当サイトHANJO
TOWNでご紹介している「HANJO給与」をご利用いただきますと、法定休日(原則休日制・変形休日制)や各割増賃金の設定を、このコラムの流れに沿って行うことができます。加えて、あらかじめ設定をしておくことで、アルバイトやパートの勤怠実績を専用アプリで管理し、普通時間帯、残業時間帯、深夜残業時間帯、法定休日の勤務時間を自動算出し、給与を自動計算することができます。
「HANJO給与」は最大2ヵ月無料でお使いいただけます。勝手に有料プランに切り替わって課金されることもありませんので、よろしければぜひ実際にお試しください。詳しい説明と申込方法はこちらをご参照ください。
また、飲食店がアルバイト・パートを雇用する場合には、時給の設定以外にも知っておきたいポイントがあります。以下のコラムで詳しく解説しておりますので、よろしければご覧ください。
<参考コラム>
雇用保険・社会保険ってどうするの? ~ 個人事業飲食店の雇用ルール
飲食店で外国人労働者を雇用するときの注意点
アルバイト・パートさんの採用や退職。どんな事に気を付けるべき?
受動喫煙防止をすすめる法律・条例のポイントと飲食店が行うべき対策(補足:受動喫煙対策は従業員向けにも必要で、このコラムではその点も解説しています)