- 開業・出店ノウハウ
飲食店経営にかかる費用を解説!
このコラムでは飲食店経営にかかる費用として、開業初期費用とその一般的な調達方法、また、お店をオープンした後の毎月の運営費用についても解説します。
開業初期費用
日本政策金融公庫による「新規開業実態調査」では、日本政策金融公庫が融資した開業者の年齢、性別、開業業種の内訳などのアンケート調査結果が毎年公表されています。
その中に開業費用についての調査結果も含まれていますが、調査した全開業者の集計となっていて、飲食店に限った開業初期費用の集計ではありません。
実は、「2018年度新規開業実態調査」からみる少額開業の実態調査に、少額開業者(同調査では250万円未満での開業を少額開業としている)の対比として非少額開業者の実態が掲載されており、ここに飲食店・宿泊業の括りではあるものの、飲食店の開業初期費用について参考となるデータが集計されています。
まず、飲食業・宿泊業については、ほとんどが非少額開業となっています(P3)。よって、基本的に少額での開業は難しい業種であることを確認できます。 そして、その開業費用の平均額は1,295万円となっており、その内訳は以下のような計算となります(P7)。
費用 | 開業費用に占める割合 | 金額換算(単位:万円) | 備考 |
---|---|---|---|
運転資金 | 15.1% | 195.5 | オープン時の食材仕入の原資などが想定される |
内外装工事 | 37.2% | 481.7 | |
設備の購入 | 17.8% | 230.5 | |
不動産の購入 | 18.6% | 240.9 | |
その他 | 11.2% | 145.0 | 土地・建物を借りる費用(敷金や入居保証金など)を含む |
初期費用の調達方法
はじめての起業において1,300万円近い初期開業費用を全額自己資金で賄うのは通常困難と考えられます。一方で、はじめての起業では信用力がないので民間金融機関に相談しても金利面などの条件は不利となります。そこで一般的には政府100%出資で、新たな事業の創出と後押しも担っている日本政策金融公庫に融資を相談することになります。
日本政策金融公庫は相談者に対して「創業の手引」という基本的なガイドラインを示しています。
そのなかで、自己資金の目安については24%というように説明されています(創業の手引P24)。保守的に見積もると、初期開業費用のうち概ね30%程度は、自己資金で賄うことを前提に検討するとよいでしょう。
なお、当サイトHANJO TOWNでは、日本金融公庫からの融資の獲得についてコラムを掲載しておりますので、よろしければ参考にしてください。(それぞれ過去の連載の中からピックアップしました)
運営費用の目安
飲食店の開業後の運営費用については、日本政策金融公庫が調査公表している「小企業の経営指標調査」によって、業態別の実情を把握することができます。
業態別の運用費用の内訳は下記の通りです。
業態 | 売上原価率(単位:%) | 人件費対売上高比率(単位:%) | 諸経費対売上高比率(単位:%) | 金融費用対売上高比率(単位:%) |
---|---|---|---|---|
一般食堂 | 37.1 | 33.5 | 28.9 | 0.8 |
日本料理店 | 36.1 | 33.4 | 29.1 | 1.0 |
西洋料理店 | 34.2 | 32.9 | 31.2 | 0.6 |
中華料理店 | 33.2 | 35.5 | 29.1 | 0.7 |
朝鮮料理店 | 37.9 | 32.0 | 29.3 | 0.6 |
カレー料理店 | 29.9 | 40.1 | 28.9 | 0.3 |
そば・うどん店 | 33.4 | 36.5 | 27.6 | 0.8 |
すし店 | 42.4 | 29.9 | 26.2 | 0.6 |
喫茶店 | 29.5 | 35.9 | 33.2 | 0.7 |
お好み焼き屋 | 31.3 | 34.5 | 31.0 | 0.5 |
ハンバーガー店 | 37.2 | 29.7 | 31.2 | 0.3 |
料亭 | 37.8 | 30.1 | 30.8 | 0.9 |
バー・キャバレー・ナイトクラブ | 18.2 | 37.6 | 37.1 | 0.3 |
スナック | 14.0 | 32.4 | 38.6 | 0.3 |
酒場・ビアホール | 32.7 | 33.8 | 31.3 | 0.6 |
補足として、諸経費の主要な内訳は、電気代、ガス代、水道代、通信費、おしぼりなど消耗品費、グルメサイトへの販促費、お店の家賃などが想定されます。
金融費用は、金融機関への融資返済に伴う利息の支払いなどとなります。
上記の表に照らして、月商100万円の一般食堂について運営費用の目安を試算すると下記のようになります。
項目 | 運営費用 |
---|---|
売上原価 | 37.1万円 |
人件費 | 33.5万円 |
諸経費 | 28.9万円 |
金融費用 | 8千円 |
実はこの値をすべて足すと運営費の合計は100.3万円となり赤字となってしまいます。小企業の経営指標調査において一般食堂は平均では営業赤字となっています。他の業態についても、スナックやバー、キャバレー、ナイトクラブ以外は、僅かな黒字に留まってしまう計算となります。
したがって、飲食店を営業黒字で経営するためには、ほとんどの業態で平均を下回るように運営費用をコントロールする必要があるといえます。
運営費用はお店の家賃の支払いや金融機関からの融資の返済といったような、お店の盛況閑散に関係なく毎月発生する「固定費」と、食材の仕入れといったように、来店が多いと想定されるときにはたくさん必要となり、逆に来店が少ないと想定される場合は少なくなるように、お店の盛況度合いに応じて増加する「変動費」という観点で分類することができ、それぞれに圧縮のノウハウがあります。「固定費」と「変動費」の解説と圧縮のノウハウについては、別のコラムで詳しく解説しておりますので、必要に応じて参考にしてください。
まとめ
このコラムでは飲食店経営にかかる費用として、開業初期費用とお店をオープンした後の毎月の運営費用について解説しました。
なお、当サイトHANJO TOWNで紹介している飲食店専用クラウド会計ソフト「HANJO会計」では、スマホでレシート撮影をすると自動的に仕訳を行って確定申告書を完成できるだけでなく、運営費用の観点からの自動集計も同時に行われます。上記の目安や自分のお店の目標値からの乖離状況に加え、改善のためのヒントを参考にしながら、儲かるお店作りに取り組むことができます。サービスの詳細はこちらからご覧ください。