- 開業・出店ノウハウ
アフターコロナを見据えた飲食店開業の手がかり
2020年2月頃から日本でも顕在化し始めた新型コロナウイルスの感染拡大は、1年以上に渡り飲食店経営に悪影響を及ぼしてきましたが、2021年2月に日本でもワクチン接種が開始されたことから、変異種などへの懸念は残りつつも、アフターコロナを見越して飲食店の開業を検討される方も増えてきたようです。そこでこのコラムでは、コロナ禍の外食産業動向を踏まえ、これからの飲食店開業の手がかりをまとめてみました。
本コラムの目次
コロナ禍の外食産業動向
「一般社団法人日本フードサービス協会」は、国の要請による新型コロナウイルス対策の業種別ガイドラインとしての ”外食業の事業継続のためのガイドライン”策定のとりまとめも担っている、国内最大の外食業界団体です。そして、同協会が毎月公開している「外食産業市場動向調査」は政府の月例経済報告にも利用されています。
同協会の会員企業は大手飲食チェーン企業が中心のため、この調査の数値もあくまで大手チェーン店を中心とした集計となりますが、業態別の動向は数字で端的に現れています。また、各企業の店舗における具体的な工夫や成功事例を掘り下げると、個人で飲食店を開業する上でも参考となる、有益な手がかりを得ることができるでしょう。
オフィス街・繁華街立地の喫茶店、居酒屋が厳しい
2020年中の同調査を俯瞰すると、新型コロナウイルスの影響により密集が嫌気され、かつ急速にテレワークが浸透したことにより、サラリーマンの休憩などが集客源であったオフィス街立地を中心とした「喫茶業態」が不振に陥りました。
さらに、同じくサラリーマンのアフターファイブの立ち寄りが主な集客源であった「パブ/居酒屋業態」は密閉密集が嫌気されると同時に、緊急事態宣言により半強制的に営業時間の短縮を余儀なくされたことから、壊滅的な打撃となりました。
「パブ/居酒屋業態」について個別企業のIR等を掘り下げて確認すると、グローバルダイニング社など比較的高価格帯のお店より、ワタミ社など低価格帯の総合居酒屋のほうがより厳しい業績になっています。
テイクアウトへのシフト
同調査によると、2020年でもっとも回復が早かったのは「ファーストフード:洋風業態」となっています。大手ハンバーガーチェーンでは、もともとドライブスルーやテイクアウトでの購入も一般化していたことから、既存設備を大きく変更することなくオペレーションをテイクアウト寄りにシフトしたことから、早期に売上を回復させています。そのなかでもスマホからのオーダーやデリバリーにも、豊富な資金力などを活かしていち早く対応した最大手企業の堅調が目立ちます。
やや遅れて「ファーストフード:持ち帰り米飯/回転寿司」などが回復に転じます。大手牛丼チェーンでは、テイクアウト・デリバリーとイートインをスムーズに両立できるよう、店内の導線変更が推し進められました。回転寿司では、商品をまわし続ける従来型のレーンから、オーダーメニューを都度高速で席に届けるレーンなどの導入が行なわれると同時に、テイクアウトについて、包装や受け渡し方法が大きく進化しました。
専門料理が堅調
「ファーストフード:持ち帰り米飯/回転寿司」について、個別企業のIRなどで掘り下げてみると、牛丼よりカツ丼が好調といったように、家庭料理やスーパーなどの惣菜では代替が難しいメニューが堅調です。別業態に目を転じても、「焼肉業態」では専用テーブルや七輪で焼くといったようなことはやはり家庭では代替が難しいので、比較的堅調です。
また、「テイクアウト:麺類」は全般にはテイクアウトへの対応難易度が高く不調ですが、専門性の高い有名ラーメン店には、コロナ禍であってもイートイン営業のみで行列ができています。このように、スーパーの中食と明確に差別化された専門料理の堅調が目立ちます。
飲食店開業の手がかり
以上のように外食産業の動向を俯瞰した上で、個人での飲食店の開業には、さらに一捻りしたり、より先を見越したりといったような着眼が求められるでしょう。様々な可能性がありますが、例えば以下のようなポイントやアイディアが考えられます。
郊外立地
在宅勤務の定着により繁華街やオフィス街から郊外に飲食店の主戦場が移りつつあります。自身も郊外立地を選ぶ場合には、初期の開業費用を安く抑えられる点が大きなメリットとなります。
一方で、店舗を構えても、多くの通行人の目に留まって認知が広がるなどといった期待はしにくくなります。クラウドキッチンといったようにテイクアウトに特化する場合は、Googleマップへの露出などもさらに難しくなる可能性があり、認知獲得のハードルが繁華街立地などに比べより高いハードルなることが想定されます。したがって、ローカルSEOやSNS対応に加え、ビラやダイレクトメールなど紙媒体も横断的に駆使して認知拡大を図る必要があります。
当サイトではSEO対策に加えて、紙媒体での認知拡大についてのノウハウをご紹介しておりますので、よろしければ参考になさってください。
なお、大手チェーン店の「計画的な集客」と「無駄のない販促活動」も、担当者の“勘”ではなく、商圏分析による“地域の見える化”によって支えられています。
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専門料理
郊外立地ではスーパーなどの中食が強力な競合になる上に、大手飲食チェーンが郊外シフトを打ち出しています。当然のことながら、基本的にスケールメリットの差などから価格勝負に陥れば勝ち目はありませんので、ご自身が提供しようする料理が、専門性が高くて、値付け相応の価値が提供できるものかどうかが重要になります。
また、食べていただければ満足いただけるというクオリティーであるのは当然のこととして、食べる前に、スーパーや大手チェーン店にはない、ご自身のお店のメニューの価値を認めてもらう必要があります。
当サイトではメニューそのものの編成に加え、写真撮影のコツやネーミングの工夫など、メニューを魅力的に伝えるノウハウをご紹介しておりますので、よろしければ参考になさってください。
インバウンド
新型コロナの影響によって2020年の訪日外国人観光客は411万人に落ち込みました。また、オリンピックは一般の外国人観戦客の受け入れを見送ることとなりました。
しかし、2019年には3,188万人もの外国人観光客が日本を訪れていましたので、いずれはこの巨大な需要が復活していくと想定されます。したがって、コロナの状況をいち早く見極めたうえでインバウンド需要回復を狙っていくことも魅力ある選択肢と考えられます。現在のwithコロナ環境は、インバウンドの有望立地であった繁華街の居抜き物件などを安く獲得できる好機といえるかもしれません。
当サイトでは、インバウンド需要を取り込むためのメニュー開発や集客のポイントを解説したコラムを紹介しておりますので、よろしければ参考になさってください。
まとめ
以上、このコラムではアフターコロナを見据えた飲食店開業の手がかりをまとめてみました。新型コロナウイルスの影響により、夢だった飲食店の独立開業を見送っていた方はたくさんいらっしゃると思われます。そのような皆様に、このコラムが少しでもヒントになりましたら幸いです。